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インタビュー

FreeTEMPO 『Life』

 

10年ひと区切りとは言うけれど、これがまさかのラスト・アルバム。次を見据えつつ自分の姿をサウンドに込めた有終の美がここに!

 

流麗で、情感豊かなメロディーとリズム──そこから湧き上がるエモーションによって、クラブ系~J-Popにまで至るリスナーのハートを惹きつけてきたFreeTEMPO。活動開始から10年目となる今年、2年半ぶりにリリースされたニュー・アルバム『Life』は、FreeTEMPO=半沢武志いわく〈自分を歌にした〉というコンセプトのもとに編まれた作品だという。

「地元の仙台でラジオのレギュラー番組を6年ぐらいやってるんですけど、番組をやるようになってからいろんな方と接する機会が増えたんですよね。何か、見えない窓みたいなものが出来たというか、ここ2~3年ですかね、僕ひとりで作ってるんじゃないんだなって思いはじめたのは。自分が気付いてなかった部分もあるし、FreeTEMPOに対するイメージっていうのは聴く人それぞれ違うし、それはそれでいいんだなって思えるようになって。それからいろんな方からのアイデアや外からの力でも動かされるようになって、それで作ったのが前作の『SOUNDS』です。『Life』はそれがさらに爆発しちゃった感じで……」。

新作のコンセプトの核心に迫る前に、これがFreeTEMPOとしてのラスト・アルバムである、ということを言っておかなければいけないだろう。

「FreeTEMPOでやれることっていうのを自分のなかで決めちゃってたところがあるんですよね。クラブっぽい音がそうなのかなあとか。だから、今回はいままでできなかったようなことを集大成的に詰め込んでみようかなって思って。で、これで最後にしようとしてるのは、今後バンドをやりたいなって思ってるからなんです。去年までDJをやっていたんですけど、この何年かは〈125BPM〉から抜け切れない感じで、もっと自分のやりたい音楽があるんじゃないかと思うようになってきたんです。僕以外の人のアイデアを取り込みながら、その時にしか作れない未知な音っていうものにすごく魅力を感じはじめたんですね。そういう感慨もあって、今回はバンド・サウンドを意識しながら作ったところもあるんですよ」。

DTMという手法はそのままに、バンド・サウンドを意識した新作ではそれまでのFreeTEMPOで聴けたクラブ・ミュージックへのダイレクトなアプローチは影を潜め、AORやR&B、ジャズ、ソウル、ソフト・ロック──つまりは半沢が自身の音楽をアウトプットしはじめる以前の90年代にスポット、もしくは再スポットが当てられたグルーヴやメロウネスが散りばめられている。自身のなかへ貪欲にインプットして蓄えてきた音楽だが、これまでのFreeTEMPOでは露わにしていなかったものもすべて出し切った、つまり〈自分を歌にした〉作品というわけだ。青柳拓次、堀込泰行(キリンジ、馬の骨)、グザヴィエ・ボワイエ(タヒチ80)、畠山美由紀、blanc.ことメイナード・プラント(MONKEY MAJIK)らゲスト・ヴォーカル陣が大きな華を添えるこの充実ぶりは、ラスト作としてあまりにも格好良すぎる!

「言い訳かもしれないですけど、止めたことによって次に何かできるかなって思うし。僕自身が不器用なんで、ひとつ終わらせないと次に進めないタイプなんですよ。僕のなかにあるものっていうのはすでに自分のなかで音が鳴っちゃってるんで、飽きてきたわけじゃないんですけど、そういうのをちょっと落ち着かせて、まだ見ぬ音を作ることが今後はすごく楽しみなんです」。

 

▼『Life』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

左から、青柳拓次の2007年作『たであい』(commmons)、馬の骨の2009年作『River』(コロムビア)、タヒチ80の2008年作『Activity Center』(Universal France)、Port of Notesの2009年作『Luminous Halo~燦然と輝く光彩』(rhythm zone)、blanc.の2009年作『canvas』(cutting edge)

 

▼関連盤を紹介。

曽我部恵一やコトリンゴ、土岐麻子らが参加したFreeTEMPOのトリビュート・アルバム『"COVERS" FreeTEMPO COVERED ALBUM』(ClearSound)

 

 

 

 

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2010年03月19日 21:00

更新: 2010年03月19日 21:02

ソース: bounce 319号 (2010年3月25日発行)

インタヴュー・文/久保田泰平

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