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インタビュー

竹中直人監督 「R-18文学賞 vol.1 自縄自縛の私」

 

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[ interview ]

 誰にでも人に言えない秘密があるはず。「R-18文学賞 vol.1 自縄自縛の私」は、〈自分を縛る〉という密かな楽しみを通じて成長していくヒロインの物語。その繊細な乙女心を、独自のユーモアを交えながら軽やかに描き出したのが、役者、ミュージシャン、文筆業など幅広く活躍する竹中直人だ。監督としての映画への向き合い方、作品に対する想いを訊いた。



ずっと役者を見守ることができたのが嬉しかった。それが監督をやるうえで一番の喜び



―ヒロインの百合亜を演じた平田薫さんが爽やかな魅力を放っていました。彼女を起用した理由は?

「あまりヒロインを官能的な感じにしたくなかったんです。だからショートヘアで細い方がいいな、と思っていて、平田さんの写真を見た時、ピンときたんですよね。それで会ってみたら声もすごく良くて。僕は女優さんの声って、すごく大切にするんです。それでもう、彼女しかないと思って」

―百合亜が自分を縛るシーンも官能的というより、とても美しく撮られていましたね

「彼女にとってセルフボンテージが特別なものではなく、日常的なこととして撮りたかったんです。そして、そこから伝わってくる平田さんの空気を信じたかった。彼女が自宅で覚えてきたセルフボンテージを、長回しで最初から最後までしっかりと撮りたいと思ったんです」



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―役者の演技を丁寧に撮りたい、というのは、竹中さんの役者に対する愛ですね

「そうですね、平田さんに対する愛おしさだと思います。監督にそれがないと切ないですもんね。僕は演出方法なんて考えたことがなくて、役者さんの感情が優先なんです。今回、安藤(政信)君が〈竹中組に参加したかった〉と言って来てくれたんですが、変な役をやりたくてウズウズしている感じが伝わってきて面白くて(笑)。他では見られない安藤政信が楽しめると思います」

―津田寛治さんが演じる渡瀬も印象的でした。渡瀬が漂わせている悲哀に、竹中さんの同性としての想いが伝わってくるようで

「今回は少女がオッサンの肩を抱いている絵を撮りたかったんですよ。「レオン」じゃないですけど、ボロボロな人生を送っているオッサンの肩を、少女がそっと抱いてあげる。同じオッサンとしては嬉しいですね(笑)」

―竹中作品といえば、いつも音楽に対するこだわりを感じさせますが、今回はLOVE PSYCHEDELICOの主題歌“No Reason”が映画にロックな息吹を与えていますね

「そういってもらえると嬉しいです。二人とはたまにお酒を飲んだりします。曲もタイトルもすごくいい。百合亜がなぜ自縄自縛に惹かれたのか、理由なんてないんですよ。僕は理屈で考えたりするのが好きじゃないし」

―何かに惹かれるのに理由なんてないですもんね。そういえば本作は、竹中作品で初めて竹中さんが役者として出演していませんが、何か特別な想いがあったのでしょうか

「いや~、最初から出るつもりはなかったんです。もう、自分で自分を演出するのがキツくて(笑)今回は監督として、ずっと役者を見守ることができたのが嬉しかったですね。それが監督をやるうえで一番の喜びですから」



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■PROFILE…竹中直人(たけなか なおと)

1956年神奈川県生まれ。多摩美術大学卒業後、劇団青年座に入る。1983年テレビ朝日系「ザ・テレビ演芸」でデビューし、テレビ、映画、舞台などで幅広く活躍。1991年初監督作品「無能の人」でベネチア国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞。その後、数々の映画作品を手掛ける。



 

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記事内容:TOWER+ 2013/6/10号より掲載

カテゴリ : Premier Seat

掲載: 2013年06月10日 00:00

ソース: 2013/6/10

TEXT:村尾泰郎