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インタビュー

LONG REVIEW――SALU 『In My Life』



この先も続く〈Life〉へのトランスファー



SALU



彼が一貫して吐いてきた言葉をフィールしてきた聴き手なら、今回の仕上がりも当然の帰結のように受け取れるだろう。OHLDとのミックステープ『BIS2』を挿んで登場したSALUのメジャー・デビュー作は、その名も『In My Life』。フィジカルで出た『I Gotta Go/ホームウェイ24号』と“Rebirth”からの4曲に配信シングル“鵠沼フィッシュ”という昨年の既発トラック群に加え、表題曲などの新録ナンバーを収めたミニ・アルバムだ。つまり、ファースト・アルバム『In My Shoes』リリース後の足取りを、その先へと続く道程に橋渡しするトランスファー的な楽曲集だとも言える。

タイトル・トラック“In My Life”における〈Life〉というワードは、フックそのままに〈人生〉と捉えることもできるし、個々の日々に照らせば〈生活〉と解釈することもできるだろうが、それこそ〈自分が変われたら未来変わってくる〉と歌ったSIMONの“Change My Life”の頃から、〈巻き戻しできないドラマ〉を綴った“Rebirth”に至るまで、多様なアングルから照射した〈Life〉そのものがSALUの描く楽曲の主題であり続けているのは言うまでもない。

そういう意味で今回の“In My Life”は、ミクロとマクロの視点をフッと切り替える感覚的なスイッチングの巧みさに、いままで以上に唸らされる楽曲だと言えそうだ。一方で、『In My Shoes』に“In Your Shoes”があったように、聴後感で〈In Your Life〉を問いかけてくる余白の残し方にもSALUらしさが滲む。彼本人のヒストリーは例えば(Young A-Townによって)“Paperplane”で綴られていたりはしたものの、ここでは抽象的な姿で行間に見え隠れするのみ。アリシア・キーズ“Doesn't Mean Anything”を想起させるループの浮遊感も、リリカルな心地良さをエモーショナルな次元へと引き上げている。

なお、宮城の化女沼レジャーランドで撮影されたSITE監督によるMVも相変わらず素晴らしいので、今回は迷わず初回盤の入手をお勧めしたい。


カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2013年06月05日 17:59

更新: 2013年06月05日 17:59

文/出嶌孝次

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