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インタビュー

INTERVIEW(2)——2013年型の歌と昭和88年の歌



2013年型の歌と昭和88年の歌



石井秀仁
石井秀仁

――石井さんが爆笑してますが……それで青さんがもう1曲、“ミッドナイト! ミッドナイト! ミッドナイト!”を作ることになったと。

桜井「だから僕は、石井秀仁になったつもりで、〈石井青のつもりで作るぞ!〉みたいな。で、がんばったんですよ。〈ウォーキング!〉に対して、ライヴとかで流れるようにやったら盛り上がるんじゃないかな、みたいな曲を作ってたら、やっぱり僕は石井秀仁にはなれないって。作れば作るほど、おかしな方向に行っちゃって(笑)。もうお聴きになったかと思いますけど、〈ウォーキング!〉みたいな、ああいう軽快な春の感じ、〈ホップ・ステップ・ジャ~ンプ♪〉みたいな感じを想像して作ってたら、どう考えてもヤンキー・ミュージックみたいになっちゃって(笑)」

――なりましたね。

桜井「(上半身だけでツイストを踊りながら)こういう感じで(笑)」

――そういう感じですね。

石井「(爆笑)」

桜井「ああ~、どうしよう!って。もう時間がないし、でも石井さんに聴かせたら、〈いいんじゃない?〉ってノッてくれたから、じゃあこれで、って(笑)」

――ただ、私がいただいた音源ですと〈ウォーキング!〉から〈ミッドナイト!〉の並びがシームレスで、ああ、これは対の楽曲なのかな、と思いましたよ。

石井「なるほどね」

桜井「意図してることはわかってもらえますよね? ただ、世界観がまるっきり違うっていう(笑)」

――あとこの曲、青さんのTwitterからすると、完成までの時間がずいぶん短かったですよね?

石井「ここ4年のなかでいちばん速いんじゃないの?」

桜井「2日……1日か。確かに速かった」

石井「結構時間がないところで作ってたから、デモとかも弾き語り的な、正体がわからない感じでくるのかなって思ったら、聴いた瞬間にもう完璧にわかります、みたいな感じで(笑)。そうなんだ、こんな構築してくるんだ、って(笑)」

桜井「(爆笑)展開がわかりやすくて、時間も〈ウォーキング!〉とまったく同じで3分13秒で作るみたいなね。あと、リズムを録る時間がなかったから、〈ウォーキング!〉で録ったドラム素材をそのまま組み替えて作ってるんですよ」

――聴いた感触の統一感は、そこもあるのかもしれないですね。あと今回のサウンドは、この曲に限らず日本の80年代ロックを思い出させるサウンドで。〈ミッドナイト!〉はさらに、当時のヤンキー文化じゃないですけど……。

桜井「それはたまたまですよ。歌詞はあとから作ったんですけど、こういう曲になっちゃったから、もういいや、〈特攻の拓〉(暴走族が登場する漫画『疾風伝説 特攻の拓』)しかないと思って(笑)。そこからいろんな80sネタが始まっちゃって(笑)」

――これはこれで、振り切れてておもしろ……。

桜井「真面目に、書きました」

――真面目に、書かれたんですね。ですがその、どうにも爆笑したといいますか……。

石井「いや、爆笑でしょう」

桜井「爆笑です(笑)」

――振り切ったな~と思って。

桜井「なんかね、1回“月光ドライブ”(2009年作『10』収録)で似たようなこと書いたんだけど、やっぱり振り切れてないんですよね。恥ずかしさみたいなところがあって。でもそれはよくない!と。で、結果的に今回は、想像以上のものになったっていう(笑)」

石井「だから、あれだよね? “月光ドライブ”は〈頭文字D〉(こちらもスピードを競う走り屋たちを描いた漫画)みたいな感じもあるよね? で、こっちは〈特攻の拓〉(笑)」

桜井「〈走り上等!〉みたいな“月光ドライブ”に対して、こっちはヤンキーのイカれた青春グラフィティーみたいなね、ちょっとシブがき隊な感じですよね。昔のジャニーズの歌詞。マッチとか」

石井「うん」

桜井「あと、石井さんはそこでいちばんいい言葉を言ってくれて。〈チェッカーズ〉って(笑)」

石井「うん。最初はチェッカーズっぽかった。まだ歌詞が出来てくる前ですよね」

桜井「歌詞が入ったらもうチェッカーズじゃないか。チェッカーズ・ネタ入ってるんですけどね。〈ボリューム上げたラジオ/叫んでいるよ悲しいラヴソング/みっともないぐらい「まだ好きだよ…」と〉。これ“涙のリクエスト”ですね。ヴォリュームを上げたラジオからはやっぱり何かの歌が流れてきてるわけじゃないですか。その歌が“涙のリクエスト”の〈まだ好きだよ~と~♪〉みたいな。だから“春の日”の歌詞のテーマに対しての、お答えみたいなものがここで書かれてるっていう。〈やっぱりまだ好きだよ〉みたいな」

石井「ははははは……そうか(笑)」

桜井「いま気付きました(笑)? でも自分の言葉で言うのはいやだから、ラジオの言葉を借りている。そういうことを書いてたら、もう一人称が〈僕〉じゃ駄目だと思って、生まれて初めて〈俺〉って使いました(笑)」

石井「最終的に、まあチェッカーズが入ってるなっていうのはわかったんだけど、俺は最初聴いたとき、歌詞のノリが初期のルースターズっぽいなと思ったんですよ。めんたいロックみたいな、そういう感じのものを書いたのかなって捉えたんですよね。そう捉えたら俄然歌いやすいんで、そういうつもりで歌ったら全然違ってたっていう(笑)」

桜井「僕のなかではA-JARIのカップリングみたいなイメージ。例えば氷室(京介)さんがね、BOOWY時代でもここまでは書かないだろうっていう感じの歌詞。僕がヤンキー文化をもっと知ってたら他に書き方もあったんだろうけど、僕はヤンキーじゃなかったから、これが限界だなっていう」

――十分ヤンキーだと思いますけどね。

桜井「〈十分ヤンキー〉ってやだよね(笑)? なんかでも、行儀がいい感じがするんだよね」

――いまBOOWYのお話が出ましたけど、確かに聴いていてBOOWYは思い出しましたね。

桜井「ああ、でも『INSTANT LOVE』(83年)よりは、『MORAL』(82年)?」

石井「うん。『MORAL』ですよね」

桜井「あとは完全にBUCK-TICKです。『SEXUAL×××××!』のときのBUCK-TICK。ギターは、あの当時にBUCK-TICKの『SEXUAL×××××!』を聴いたときのことを思い出して、こんな感じかな?って。ほら、さっき土田さんが80sって言ってたけど、これはもう明確に80sにしようと思ってやってるので、そういう感じでギターも弾いてて。ギター・ソロとかね(笑)」

石井「ギターだけでいったらさ、BUCK-TICKならあとのほうの『HURRY UP MODE』(90年の『HURRY UP MODE (1990MIX)』)とか、後期の一風堂とかさ、そういうサウンドですよね」

桜井「石井さんは、〈ウォーキング!〉で2013年型の歌を作ってくれるじゃないですか。で、僕は昭和88年の歌を作ってる」

石井「(笑)」

――それが両方ともひとつのバンドに収まっているというのがcali≠gariのおもしろさですよね。

桜井「毎回結果的に上手くいっているようなもので、ヒヤヒヤものですけどね、いつも(笑)」


カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2013年04月03日 18:00

更新: 2013年04月03日 18:00

インタヴュー・文/土田真弓