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インタビュー

THEME PARK 『Theme Park』



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シーム・パーク(つまり日本語読みだとテーマ・パークだから遊園地!)という、何とも微笑ましいネーミングの3人組がUKから登場した。その名に違わず楽しくて爽やかで、まるで青春の1ページを切り取ったかのように甘酸っぱいポップ・ロック・サウンドを展開する彼ら。すでにアルバム・デビュー以前からブロック・パーティやテンパー・トラップ、ミステリー・ジェッツやボンベイ・バイシクル・クラブらとツアーを行い、いくつかの大型フェスにも出演を果たしてきたという経歴の持ち主で、このたび満を持してファースト・アルバム『Theme Park』をリリースする。

取材に応じてくれたメンバーのマーカス・ホートンいわく、「自分たちの音楽はダンサブルなオルタナティヴ・ポップかな、たぶん」とのこと。そう、〈ポップ〉と言い切ってしまわずに、〈オルタナティヴ・ポップ〉としているあたりが、いかにも彼ららしいところ。トーキング・ヘッズやヴァンパイア・ウィークエンドらとの比較が多いのも頷けるそのサウンドは、中南米をはじめとする世界各地の音楽要素をごく自然に採り入れていて、トロピカルなムードやリゾート感もたっぷりだ。ずばり“Jamaica”なんて曲まで収録されている。

「ジャマイカには行ったことないけど、僕たちジャマイカ人のハーフだよ。別に意識的にカリビアンやトロピカルなサウンドを作ったわけじゃないんだ。新しいサウンドを生み出そうと変わった楽器を使ったり、エフェクトをかけたりするのが好きだから、このアルバムでも世界の楽器を少しずつ使っているよ。それがリゾート感を出しているんじゃないかな」。

ジャマイカ人の血が半分流れているというのは、ヴォーカル&ギター担当のマイルス(兄)と、ギター&ヴォーカル担当のマーカス(弟)という双子のホートン兄弟を指している。父親がジャズの巨匠2人(マイルス・デイヴィスとマーカス・ミラー)のコンサートを観てから間もなく彼らが誕生。だから、そのように命名されたそうだ。もうひとりのオスカー・マンソープを含め、3人揃ってとってもフォトジェニック。新人ながらロックスター然としたカリスマ性を漂わせている。

ちなみに、アルバムをプロデュースしたのは、フォールズやマッカビーズとの仕事で知られるルーク・スミス。

「フォールズやフライヤーズを手掛けていた頃からルークのプロダクションのファンだったんだ。音質の細部へのこだわりと〈本物〉の制作をするところがね」。

そしてもうひとり、彼らとは抜群の相性とも言えそうなフレンドリー・ファイアーズのエド・マクファーレンも1曲でプロデュースを担当している。その曲“Tonight”は瑞々しい昂揚感と希望に満ち溢れたダンス・ナンバー。フレンドリー・ファイアーズのファンも夢中にしてしまいそうだ。

「もともとこの曲はルークとレコーディングしていたんだけど、曲を仕上げた時にもっと現代風にできないかと思って、それでエドに入ってもらったんだ。彼との作業は素晴らしかったよ。彼にとってバンドのプロデュースは初めてのこと。セッションがとても新鮮に感じられたよ」。

シーム・パークの楽曲はフレンドリー・ファイアーズほどダンスフロア寄りではなく、もう少しレイドバックした雰囲気。だが、あのキラキラと空気の粒子が輝きを放っているかのような清涼感においては共通している。他のバンドと違っているのは「きっと遊び心とエネルギーだろうね」と答えるマーカス。遊園地ではジェットコースターなどの絶叫系ではなく、意外にもティーカップがお気に入りだとか。そんなちょっぴりノスタルジックなところも、上手くサウンドに反映されている!? ともかく、『Theme Park』がほのぼのと幸せな気分を運んでくれることは間違いない。



PROFILE/シーム・パーク


マイルス・ホートン(ヴォーカル/ギター)、マーカス・ホートン(ヴォーカル/ギター)、オスカー・マンソープ(ギター)から成る3人組。2011年初頭にロンドンで結成。同年10月にラヴ・ラヴ・ラヴからファースト・シングル“Milk”をリリース。翌11月に同曲がコンピ〈Kitsune Maison 12〉に収録される。その後、ベーシストの脱退を経て現在の編成となり、トランスグレッシヴと契約。2012年に入ると“Two Hours”“Jamaica”がシングル・ヒットを記録。ミステリー・ジェツやブロック・パーティのツアー・サポートに抜擢されて知名度を上げるなか、3月13日にファースト・アルバム『Theme Park』(Transgressive/HOSTESS)が日本盤化される予定。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2013年03月13日 18:01

更新: 2013年03月13日 18:01

ソース: bounce 352号(2013年2月25日発行)

インタヴュー・文/村上ひさし