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インタビュー

Wienners 『UTOPIA』



美しすぎて、どこか怖くもあるユートピア──音楽に対する自由な精神性でネクスト・ステージに到達したニュー・アルバム!



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2分弱のファスト・チューンばかりを連発していたかつてのWiennersの姿は、ここにはない。納得のいく曲がなかなか出来ずに苦しんだ時期を乗り越え、ファースト・シングル“十五夜サテライト”に続いてリリースされた2年ぶりのフル・アルバム『UTOPIA』で、彼らは間違いなくネクスト・ステージに到達した。

「1月ぐらいからちょっとずつレコーディングをしていて、その間に初めてのワンマン・ツアーをやったり、韓国にライヴをしに行ったり、シングルを作ったりして、リアルタイムでバンドが成長していったぶん、録る曲もどんどんアップデートされていったんです。完成形が見えないのは不安だったんですけど、とにかくパーツを揃えなきゃって、ギリギリまで曲作りをしてました」(玉屋2060%、ヴォーカル/ギター:以下同)。

本作の核をなしているのは、ミニ・アルバム『W』の頃からの課題だった〈疾走感とスケール感の融合〉を見事に実現させた、“十五夜サテライト”と“Venus”。独自のオリエンタリズムを感じさせるメロディーや詞世界も合わさって、まさにユートピアのような〈ここではないどこか〉を作り上げている。

「自分のなかで曲作りの流行りみたいなのがあって、この1年は〈神様〉が流行りだったんです。例えば、観音様の土蔵とかがそうだと思うんですけど、ちょっと覗いちゃいけない世界みたいな、きれいすぎてちょっと怖いとか、そういうことをやりたくて。“十五夜サテライト”と“Venus”が出来たことで個人的には満足して、ブームがやっと終息しました(笑)」。

フリッパーズ・ギターにオマージュを捧げたネオ・アコースティック調の“海へ行くつもりだった”や、日本のスカ・パンクの先駆け的な存在であるLIFE BALLの名曲“BECAUSE I LOVE IT”の打ち込みによるカヴァーなど、パンク/ハードコアを根っこに持ちながら、さまざまなサウンドを縦横無尽に採り入れるWienners節はもちろん健在。彼らは音楽に対する自由な精神性をもって隆盛を極めるアイドル・シーンとも並走し、今年はでんぱ組inc.への楽曲提供も行っている。

「Plus-Tech Squeeze Boxのハヤシベトモノリ、中田ヤスタカ、前山田健一とかには〈あっちばっかり認められやがって、クソ!〉みたいな気持ちはあります。ハヤシベさんがインタヴューで〈ある日ショパンを聴いて、次の日にブラック・フラッグを聴く〉みたいなことを言ってたんですけど、その吐き出し方が違うだけで、〈音楽が好き〉っていうことはホントに同じなんですよね。好きでよく聴いてるんですが、だからこそ絶対引きずり下ろしてやりたいなって思うんです(笑)」。



▼関連盤を紹介。

左から、Wiennersの2012年のシングル“十五夜サテライト”、2011年のミニ・アルバム『W』(共にwns)、でんぱ組.incの2012年のシングル『でんぱれーどJAPAN/強い気持ち・強い愛』(MEME TOKYO/トイズファクトリー)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2012年09月25日 00:30

更新: 2012年09月25日 00:30

ソース: bounce 347号(2012年8月25日発行)

インタビュー・文/金子厚武