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インタビュー

ブッゲ・ヴェッセルトフト

北欧勢の躍進とブッゲのネクスト・コンセプション

近年のジャズ界を見渡すと顕著な事実。それは前線における北欧勢の優位性が明白となった事ではないか。そして、そうしたなか重要な位置を締めるのが、ノルウェー人ピアニストのブッゲ・ヴェッセルトフトが設立したジャズランド・レーベルだろう。同社は昨年で15周年を迎えた。 「2000年頃が大きな分岐点かな。その頃から、多くの人たちに僕たちの音楽を認知し、聴いてもらえるようになったからね」

スタート時から同社が掲げたのは、〈ニュー・コンセプション・オブ・ジャズ〉。そのキャッチとともに、リアルなジャズ流儀と電気音/電気効果をマジカルに重ね合わせた行き方を彼は世に問うて来た。そして、そうした清新なエレクトロ・ジャズの指針はいまや今様ジャズのひとつのメインストリームにもなっている。

「始めたときは新しい事であったのが、おっしゃるように今は主流になってきているというのは感じるし、それは私にとって歓びでもある。だが、我々は実験の精神を失わないし、今も新しいアーティストを厳しい目で探し続けている」

そんな彼、ここのところは自己グループ表現から離れた、より個人的な路線を楽しんでいるようにも思える。2011年作『デュオ』はドイツ拠点ハウス・クリエイターのヘンリク・シュワルツとの対話作だし、2012年新作『ソングス』はソロ・ピアノによるスタンダード曲集だ。

「グループで10年やって、ちょっと疲れちゃった。『ソングス』はちょうどグランド・ピアノを買い、やはりピアノというのは素晴らしい楽器だと思えた事が大きい。とともに、ジャズ奏者だった父親がかけるスタンダードを聴いて育ったので、振り出しに戻ってみるのも面白いかなと」

ヴェッセルトフトはこの4月に多国籍プロジェクトを率いて来日した。NY広角型ハウスDJのジョー・クラウゼル、フランス人トランペット奏者のエリック・トラファズ、ノルウェー人ドラマーのアンドレアス・ビー他、それはまさに多彩な顔ぶれが揃えられていた。

「そろそろバンドをやりたくなってね(笑)。音楽家として尊敬できる人たち、僕とエレクトロ・ジャズというルーツを共有できる人たちを集めた。まさにこれは念願のプロジェクトと言えるな」

この夏の欧州ジャズ・フェスを回るとともに、彼はこの単位によるアルバムのリリースも念頭においている。

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2012年07月18日 12:11

ソース: intoxicate vol.98(2012年6月20日発行号)

取材・文 佐藤英輔