
「リズムこそが情熱であり、人生のエネルギーになるんだ」
ミニマル・ダブの名門【Chain Reaction】よりリリースされた『Multila』(2000年)がミニマル・テクノ〜実験音響好きを中心に話題を呼び、靄に包まれた雑音と、日常の縁から滑り落ちそうに危うく官能的なビートで電子音楽界の最突端となったヴラディスラヴ・ディレイことサス・リパッティ。エレクトロニクスとパーカッションを駆使し、さまざまな名義でポップと実験の境界を彷徨う彼だが、今回【RASTER-NOTON】の日本ツアーへの参加に併せて、ミカ・ヴァイニオ、デレク・シャーリーらと共に結成したエクスペリメンタル・ジャズ・バンド、ヴラディスラヴ・ディレイ・カルテットでのライブ、そしてカールステン・ニコライ、オラフ・ベンダーらと〈未来について語るレクチャー〉などを行った。
「語ること、言葉を使わないこと、どちらも可能なコミュニケーションが好きだけど、時々もっと話さずに行動できればと考えることがあるよ。アートや音楽の面だけじゃなく、全体的にね」と語るサス。4歳の頃に母親のキッチンでポットやフライパンを叩いて遊んだのをきっかけにリズムに魅了されたという。
「僕にとってリズムこそがすべてさ。食べること、息をすること、考えたり、歩いたりすることも、すべてがリズムで、リズムこそが情熱であり、人生のエネルギーになるんだ」
自身で金属に穴を開け、溶接したり、ハンダ付けをするという自作パーカッションやピエゾマイクを使用し音のかけらを拾っては生き物のように蠢くリズムを作り出すなど、彼のサウンドの手法には大胆で用心深いリズム哲学が見え隠れする。
「僕にとって大切なのは自身の独特なサウンドを獲得することなんだ。自分の手によって直接的に作ったサウンドはこの世界の誰にも出せないし、どんな音でも創りだすことが出来る。それこそが僕を突き動かすものなんだ」
今後は妻であるAGFとの新たなプロジェクトやディレイ名義での新作も予定されているというサス。最後に〈未来の音楽像〉について聞いてみた。
「純粋に新しい音楽を想像するのは難しいけど、独特で新しい音楽は10年に一度、もしくはそれ以上かかってやって来ると思う。次の新しい音楽はもしかしたら欧米の大きな街からではなく、どこか遠くの、インドやアフリカの小さな街からやってくるのかもしれない。その新しい音楽がやって来たときに、まだ自分が存在していればいいね」
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