『これは自分自身のストーリーだ』という意識より、脚本家として客観的な立場で現場を見ていたような気がするんだ。

まだ27歳でありながら、5年生存率50%のガンを宣告された青年、アダムが、病を通して人生に向き合う映画『50/50 フィフティ・フィフティ』。実際にガンを患った経験を持つ脚本家のウィル・レイサーは、友人でありこの作品に出演もしているセス・ローガンに背中を押され てシナリオの執筆をはじめた。
「セスがある日、こんなことを言ったんだ。『みんなが持っているガンのイメージはいつも同じで、悲しいものばかり。しかも年をとった人たちの物語が多いよ ね』って。この言葉をきっかけに自分の経験を脚本にしてみようと思ったんだ。もちろん闘病中はつらいことも多かったけれど、僕はもともとコメディ・ライ ター。このバックグラウンドを生かして、病気のことや周囲の人たちとコミュニケーション不全になったことを、ユーモアを交えながら書いてみようと思った。 セスは才能あふれる俳優でありフィルムメイカー。製作者としても参加してくれた彼の存在がなければ、この映画はありえなかったと思うよ」
ガンをネタに女の子をナンパするシーンについて聞くと、「僕たちはオタク系だから、あんな大胆なことは無理!あくまでもフィクションだから」と笑う。アダムを演じたジョセフ・ゴードン=レヴィットにも、『こうあるべき』と押し付けることは一切なかったという。
「撮影現場にも通っていたし、アダムのキャラクターは僕の延長線上にあるものだからジョセフともいろいろ話したけれど、具体的な演技というよりも心の動き について語り合うことが多かったかな。いい脚本を書きたい、いい映画にしたいという思いが何より強かったから、『これは自分自身のストーリーだ』という意 識より、脚本家として客観的な立場で現場を見ていたような気がするんだ。でもたまたま両親が撮影を見学した日に、アダムが母親にガンのことを話すシーンを 撮影していて、母親はいろいろと思い出して涙を流していたね」
闘病中、エンターテイメントの力を感じる瞬間がたくさんあった。
「エンターテイメントは、ときにはつらい現実から逃避する手立てになるし、ときには感情を揺さぶられてカタルシスを感じられるセラピー的な効果も発揮す る。この映画を観た患者の人たちが、自分の言葉で表現できなかった気持ちを話す糸口になったし、ヒーリングにもなったと言ってくれたことが、とてもうれし かった。笑いを媒介にしたヒーリングになったのだとしたら、さらに素晴らしいことだよね」
ガンと闘ったこと、そしてその経験をもとにあくまでもフラットな目線で脚本を書いたことで、以前よりもずっと人生を楽しめるようになったと語る。
「患うまでの僕はワーカホリックで神経質で心配性、遅刻も許さないタイプ。自分と合わない女の子ととばかりつきあっていたしね(笑)。でも闘病の経験を通 して、いろんなことを深刻に考えすぎずに、生きられるようになった。周りの人たちにもよく言われるんだ。今のウィルのほう、が一緒にいて楽しいよって (笑)」

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