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インタビュー

INTERVIEW(4)――この声さえあれば、怖いものはない



この声さえあれば、怖いものはない







――(笑)それしても高橋さん、90年代好きですよね。


「そうなんですよね。でも、全部林檎さんからなんですよ、あんまり言いたくないんですけど(笑)。林檎さんがCROSS FMでやってた〈悦楽パトロール〉というラジオ番組をネットで探したりして、オンエアされた曲を全部チェックして。そうやって広がってる感じもありますね」


――今回のアルバムに参加してるH ZETT Mさんも、林檎さん繋がりで聴くようになった?


「最初はそうですね。〈東京事変の“群青日和”はなんて名曲なんだ!〉というところから始まって、H ZETT Mのソロ・アルバムを聴いて、そこからPE’Zにいって。カッコ良いピアノを弾く人っていうのはもちろんなんですけど、ソロ・アルバムを聴くと、ものすごいメロディーメイカーなんですよね。歌いたくなるようなメロディーを作る人だなって」


――いっしょに制作すると、さらに刺激がありそうですよね。


「あんまり音楽の話はしなかったんですけどね(笑)。H ZETT Mさんの場合は、最初にルールを作ったほうがいいなって思ったんです。ルールというか〈これくらいの幅のなかでやりたい〉っていうのをお伝えして。それが〈山瀬まみからプライマル・スクリームまで〉って言う……」


――(笑)何ですか、それ?


「山瀬まみさんの“ゴォ!”っていう曲が大好きなんですよ。(奥田)民生さんが作曲してる、“大迷惑”っぽい曲なんですけど。でも、H ZETT Mさんからは〈大体わかりました〉って返事がきて(笑)。〈え、ホントに!?〉って思ってたんだけど、最初に届いた曲がアルバムに入ってる“お天気雨”だったんです。これがもう……」


――素晴らしい曲ですよね。美しくて、切なくて、H ZETT Mさんらしいフリーキーなところも入ってて。


「うん、私も大好きです。これはもう、アルバムの最後の曲だなって思ったし」


――〈ぼくは今日に大きく手を振って さよなら しよう〉というフレーズもすごく印象的ですが、どんなテーマで書いた歌詞なんですか?


「雨が上がる感じがすごく好きで、そのイメージが強かったんですよ。最初はホントにそれだけだったんだけど、この前、インストア・ライヴで歌うときに改めて歌詞を読み直してみたら、〈いまの心情にすごく近いんだな〉ってことに気付いて。次の自分に会うために、じゃないけど、いままでにもらったものを全部持って、次に進んでいけばいいんじゃないかなって。でも、この歌はホントに好きです。ライヴで歌うときも、泣いちゃったらどうしよう?って思うくらい」


――『PICORINPIN』を作り上げたことで、これで次に進めるっていう手応えもあったのでは?


「そうですね。初めてのことも多かったし、反省点もたくさんあるんですけど、〈次のアルバムは、こんなふうにしたい〉っていう感じが既にあるので」


――素晴らしい。〈何をやるべきだろう〉って迷ってた時期を乗り越え……。


「ずっとそんな感じでしたからね。なんて言うか、自分のカラーを探さなきゃいけないと思ってたんですよ。でも、ほかの人と違うところだったり、私に残ってるのは声しかないんですよね。歌うときに花を持つ、とか、とりあえずアコギだろ?みたいなことじゃなくて(笑)、この声さえあれば、きっと怖いものはないはずだと思えるようになった。あとは、そのときどきでタイムリーなものを作っていけばいいんだっていう」


――その瞬間にやりたいことを、素直に表現する。


「それがいちばん健康的ですよね。今回、いっしょにやらせてもらった皆さんを見ていても、やっぱりそうなんですよ。音楽って、生活のうえに成り立ってるんですよね。ちゃんと寝て、おいしいものを食べて、いいものを観て、好きな音楽を聴いて、そういうところから音楽が生まれてくるんだなって。もしかしたら音楽には直接関係ないかもしれないけど、〈私が私でいて、いいのかな〉って思えたのは大きいですね」


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掲載: 2011年09月21日 18:01

インタヴュー・文/森 朋之