こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

インタビュー

the GazettE 『TOXIC』

the gazette

昨年、自己初となる東京ドーム公演の実現をもって、ひとつの流れに区切りをつけたthe GazettE。
それを経て彼らが目指すことになったのは、自分たちのなかで曖昧な形をしたままだった理想を、
より明確に体現することだった。『TOXIC』と命名された待望のニュー・アルバムに脈打つ、
このバンドが生まれ持った<毒性>の正体とは?

「何かに対して疑問や不満を抱きながらじゃないと、前には進めない。
 ハッピーなだけの状態では、むしろ立ち止まっているしかないから。」(麗)



「全体的に考えて、まさに理想通りですね。
なんかこう、それまで曖昧な状態にあった理想が具現化されたような感覚で……」

 前作以来2年3ヵ月ぶりとなる新作アルバム完成の手応えを尋ねると、
the GazettEのフロントマン、RUKIは躊躇なくこう答えた。
これは人生のなかで、そう幾度も口にする機会のある言葉ではないはずだ。
その発言自体から、彼らが今作によってひとつの重要な答えを手に入れた事実がうかがえる。

  この新作は『TOXIC』と銘打たれている。<有毒な>という意味である。
実際、楽曲のタイトルを眺めてみただけでも、かなり毒気をはらんだ表現が目につく。が、
いわゆるありがちな毒々しさを求めたわけではないとRUKIは言う。

RUKI(Vo.)「確かに相変わらず歌詞のあちこちでは毒を吐いてたりしますけど、そういったこと以上に、
この言葉自体が今の自分たちが向かっていくべきものを象徴しているところがあって。
それを言い表すうえで必要なキーワードというか。実際、曲が出揃う以前からこの言葉は自分のなかに
あったんです。だけど、いざメンバーたちに提示したときにも、誰からもまったく異論は出てこなかった」

同じくこの表題について、ギタリストの麗はこう語っている。

麗(Gt.)「結局、この言葉が何を象徴してるかといえば自分たち自身なんです。
怒りとかそういったものが原動力の一部になっている事実は否定しようがないし、
それこそ理想に追いつけない自分たちに対する不満や歯痒さみたいなものもある。
そうやって常に何かに対して疑問や不満を抱きながらじゃないと、前には進めない。
ハッピーなだけの状態では、むしろ立ち止まっているしかないから」

 あくまでRUKI個人のなかにだけ存在していた毒というキーワードが自然にバンドとしての総意となっているのと
同様に、本作における音楽的方向性についても、あらかじめ言葉で確認めいたことをするまでもなく、
全員の解釈が一致していたのだという。

RUKIは、「無言のうちに全員が同じ方向を見ていたということだと思う」と言う。

そして麗は、次のように発言を重ねた。

麗「言葉での約束事なんか、いつもないですよ。バンドは会社とか企業ではないから、
いちいち会議をしたりホワイトボードに書きだしたりしなきゃ意思の疎通ができないようでは成り立たない。
自分たちは、普段の会話からお互いの意思を汲みながら確認できているから。
逆に、いざアルバムを作ろうというときにそれが見えなくなったら、バンドは終わってしまうんだろうと思う」
 



the GazettE Main





 
ここまで言い切ることができるのは、現在の5人がそうした部分での不安を本当に抱えていないからだろう。
話は前後するが、彼らは昨年末に初の東京ドーム公演を実現させている。
その大舞台に向かう流れのなかでリリースされてきた一連のシングルは、
このバンドのルーツや憧れ、パブリック・イメージといったものを踏まえながら作られたものであり、
いわば<昨日までのthe GazettE>が凝縮されたものでもあった。
それに対し、同公演後に生まれた楽曲たちには、より直接的に現在形の嗜好や欲求が反映されている。
そうした両者が1枚のアルバムという単位のなかで不思議なほど自然に熔け合っているという点も
また非常に興味深いところだ。

 さて、本作はいわゆる通常盤に加え、特別仕様の初回生産限定盤も登場することになっている。
しかも、かなり常識を超えた大胆な内容のものと言っていい。RUKIは次のように説明している

RUKI「まずアルバム自体のアートワークが、これまでの一連のシングルが混ざったものになっていて。
そこから話が膨らんで、本のような形態のものを作ろうという話になったんです。
そこから歌詞の世界観を画像にしていく作業というのを始めて。
もちろん音楽である以上、曲を聴いただけの状態での解釈で構わないんですけど、
それに伴ったヴィジュアルを目にしたときに、また別の景色が見えてくるようなものにしたかった。
しかもそこには、それこそ現在の日本というものも映し出されていて……。
今、この国自体のバランスが崩れてるようなところがあるじゃないですか。
そうした現在進行形の現実を、可能な限り露骨に描いてみたかった。
しかもそこで自分たちが言いたいことというのは、まさにこれまでも歌ってきたことと重なっていて。
そこに気付かされたとき、この作品に伴うべき視覚的要素というのも自分のなかで具体的になってきたんです」

 音楽的にも視覚的にも、これまで温め続けてきた理想が実体を伴ったものになった現在、
the GazettEという存在自体が従来のいかなる瞬間よりも毒性の強い状態にあるといえる。

 誤解を恐れずに言えば、彼らは誰からも愛されるようなバンドではないし、
あくまで攻撃的で棘のあるこの音楽は、聴き手を優しくいたわってくれるものではない。が、
世の中にも音楽シーンにも、クスリよりも毒が必要な局面というのがあるのではないだろうか。
もしかするとこの『TOXIC』こそが、今、何かを劇的に覆すための特効薬になるのかもしれない。

■New Album……『TOXIC』10/5 on sale!

■ SONG LIST…
01.INFUSE INTO
02.VENOMOUS SPIDER'S WEB
03.SLUDGY CULT
04.RED
05.THE SUICIDE CIRCUS
06.SHIVER ※TVアニメ「黒執事Ⅱ」オープニングテーマ
07.MY DEVIL ON THE BED
08.UNTITLED
09.PLEDGE ※ジェムケリーCMソング
10.RUTHLESS DEED
11.PSYCHOPATH
12.VORTEX
13.TOMORROW NEVER DIES
14.OMEGA

■ LIVE… 「the GazettE TOUR11 VENOMOUS CELL」

10月10日(月・祝) 東京国際フォーラム ホールA
10月12日(水) 名古屋中京大学文化市民会館オーロラホール
10月13日(木) 神奈川県民ホール 大ホール
10月15日(土) オリンパスホール八王子
10月18日(火) 千葉県文化会館
10月19日(水) 鴻巣市文化センター (クレアこうのす)
10月24日(月) 滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール 大ホール
10月26日(水) 新潟テルサ
10月27日(木) 石川県・こまつ芸術劇場うらら
10月29日(土) 福岡サンパレス
10月31日(月) 前橋市民文化会館
11月1日(火) 長野県・ホクト文化ホール 中ホール
11月4日(金) 秋田市文化会館 大ホール
11月6日(日) 仙台サンプラザホール
11月8日(火)、9日(水) 大宮ソニックシティ 大ホール
11月11日(金) 静岡市清水文化センター 大ホール
11月14日(月) なら100年会館 大ホール
11月16日(水) 山形市民会館 大ホール
11月18日(金) 青森市民ホール
11月21日(月) 市川市文化会館 大ホール
11月23日(水・祝) 栃木県総合文化センター
11月25日(金) 三重県文化会館 大ホール
11月28日(月) 岡山市民会館
11月30日(水) 松山市総合コミュニティセンター キャメリアホール
12月3日(土) 札幌市民ホール

■ PROFILE…the GazettE

RUKI(Vo.)、麗(Gt.)、葵(Gt.)、れいた(Ba.)、戒(Dr.)の5人からなるロックバンド。
一切、妥協することなく追求されたハイクオリティーなサウンドと世界観は国内外でも高く評価されている。
約2年3ヵ月ぶりの新作を発表し、更なる飛躍が期待される。

tower328-1-mini   tower328-2mini
記事内容:TOWER 2011/9/20号より掲載

カテゴリ : COVER ARTIST

掲載: 2011年09月20日 12:00

ソース: 2011/9/20

TEXT: 増田勇一