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インタビュー

INTERVIEW(2)――セクシーな、女性的な部分を出そうと

 

セクシーな、女性的な部分を出そうと

 

――じゃあ、それが新作のテーマなんですか?

まり「自然なんですけどね。『あっ、海だ。』が出来た時は〈すごいカッコ良いのが出来た〉って自画自賛してて、ライヴもお客さんが増えたけど、でもセールス的にはそんなに……っていうちょっと寂しい事実があって。それはたぶん、自分たちがまだ開けてない、振り切ってないっていうか、『あっ、海だ。』はすごいカッコ良かったんだけど、人によっては〈ちょっと恐かった〉〈圧力があった〉とか言われたり。自分たちはやっぱり人に聴いてもらいたくてやってるから、じゃあ私たちのおもしろくてカッコ良い世界観をもっと聴いてもらえるようにするには、もうちょっとウェルカムな感じにしたいかな、って思って。私、結構『あっ、海だ。』の時とかは、〈なんでみんな、こんなにカッコ良いのに気が付かないのよ、プンプン〉って感じで(笑)、ちょっと怒ってる気すらしてて。〈みんな解散しやがって〉とか、〈みんな、ついてきなさい!〉っていう気分だったんだけど、今回は3人でとことん楽しんでて、〈ほーら、みんな楽しいでしょ?〉って。ちょっと優しいっていうか、なんか、自分で勝手に作ってたハードルを下げた、っていうか。“チキンサンドイッチ”とかも強力なサウンドなんだけど、それが前作だったらたぶん“岩壁の上の一本指総長”みたいな、〈一本気で来いや!〉って感じなんだけど、今回は、従順なお弁当作りの歌みたいになってて、そこの絶妙なゆるさが(笑)、むしろみんなが入り込みやすいのではないか、とかは思ってたかも。殺気立ってる部分が減ったのかな」

やよい(ベース/コーラス)「ある意味、より等身大っていうか。自分たちも無理してない。前作は、〈私たちはライヴ・バンドである、ってことをいかに伝えるか〉みたいなのがちょっとあった気がする。サウンドにしても、〈おりゃあー!!〉っていう圧みたいなのを表現したいと思ってて。いまも、もちろんライヴ・バンドなんだけれども、今回はそこをどうやって知らしめるかっていうことよりも、楽しい音楽がここにある、みたいな。そっちを重視したのかな」

まり_L
photo by saito mayumin

まり「昔からつしまみれのライヴを観て、うちらのことをすごい好いてくれてるエンジニアさんも、〈俺はつしまみれの、音楽性の幅広さみたいなのを表現したい〉みたいなことを熱く語ってくれてて。だから、3人の音を〈おりゃおりゃおりゃ!!〉っていうよりかは、“自転車”とか“ストロボ”みたいなキーボードを入れてる曲とかもあったりして。自分たちだけだと確かに〈ライヴをそのまま閉じ込めるのがいちばんカッコ良い〉って考えたりはするから、そういう面でのサポートがあったというか。“J-POP”っていう曲の途中で自分らが〈J-POPっぽいものにしたい〉って言ったらとことんJ-POPサウンドを表現しようとしてくれたり。アシスタントのエンジニアさんもがんばってくれたんだけど、“桃だろう”っていう曲で、みずえが〈ここは猿なんです、犬なんです、雉なんです〉って言うのに対しても賛同してくれて、彼(取材に立ち会ったスタッフ)は猿なんですけど(笑)、他のスタッフの人も〈朝から雉の鳴き声を研究してます〉とか言って、みんなが私たちのくだらない音楽性をより豊かにしようと(笑)いろいろ参加してくれて、それでよりいっそう、〈つしまみれって楽しいよ〉感を広がったような」

――現場で膨らんでいった?

まり「現場で、そうだね。なんか、最初思ってたのとは違うものになったのかな、いい意味で」

――どう違うものになったの?

まり「ホントに、究極は音3つだけがいちばんカッコ良いかな、って思ってて。ギター、ベース、ドラム、あと声。それで録音したほうが、それぞれの音が完全に聴こえるし、カッコ良いって思って、今回も相当剥き出しな感じで録ったほうがいいかな、とかは自分で勝手に思ってたんだけど、それがなんか、エンジニアの意向とかみんなの思いとかでどんどん変わってって、こういう形になって。それに関してはすごい、曲の世界観が広がって感じられるから、このアルバムはこれで良かったんだろうな、って私は思ったんだよね。あとは、合宿しながら曲を作ってて、去年。で、トータルで2~30曲、昔から録ってない曲も合わせて出来て。でもはじめからヴィジョンができてたわけではなくて、曲をチョイスしてって……あれ? プリプロはもう片っ端から録ったんだっけ?」

やよい「ある曲を片っ端から録った」

まり「そのプリプロのエンジニアさんも、〈もしホントに録るんだったら本番はこうしたら?〉とかアイデアをくれて。あと、〈これいいかも〉って思った曲はライヴでもやってみたりして、反応が良かったら自信が持てたり……とか言いながら曲が決まってったので、そうだよな、全然予想がつかなかったけど、だんだんまとまった、みたいな感じかも。タイトルも全然決めてなくて、“ノー・パンク”っていう曲を作ったりして。なんか、つしまみれのことをパンクとか言う人も結構いるから、〈私たちパンクじゃありません、ノー・パンクです〉っていうアルバムもおもしろいかな、っていうアイデアもあって、それもいいなーって思ったんだけど、私たち女の子だし、ちょっとセクシーな、女性的な部分をバーンっと出そうか、って。そしたら『Sex on the Beach』っていうタイトルが出てきて。なんか〈Sex And The City〉みたいだし、いいかなって。ドキッとするし」

――「Sex And The City」は、私も思い出しました(笑)。

まり「さすが、オンナ(笑)。それもありつつ、ちょっとアメリカの風も感じられるかな、みたいな(笑)。で、じゃあむしろ『Sex on the Beach』っていうタイトルにして、女の子の剥き出しな感じを表そうか、って、タイトルが決まった時点で、またちょっと自分たちの思いが固まったっていうか。まあ女性的とか言って“桃だろう”とか、一体なんなんだろう、とか言いながら(笑)。でも女の子だからこんな意味わからない物語が出来るよねーって」

やよい「あれを曲にすること自体が女の子らしいだろう、って(笑)」

みずえ「“桃だろう”は、もっとすごいロックだったんです、原曲は。My Way My Loveみたいな、ゴリッゴリのロックをやりたい、っていうイメージがあって。“パンクさん”っていう曲があるんで、それに対抗して〈ロックさん〉っていうのを……〈693〉か。そういうポジションで曲を作ったりしたんですけど、それが軽くお蔵入りになって、もう一回合宿でやってみようってなった時に、もうロックな気持ちにならなくて、なぜか“桃だろう”になって(笑)。ホントに意味わかんないんですけど」

まり「〈693〉が生きてる部分は、〈デデデ・デデデ・デ~ン〉っていう6フレット、9フレット、3フレットの、〈エサにつられた~〉の部分なんですけど、そこだけちょっとニルヴァーナっぽさを残して(笑)。ニルヴァーナみたいな曲にしようと思ってたのに、あんなことになってしまって本当に〈693〉には申し訳ない(笑)」

――あそこ、ニルヴァーナなんだ(笑)。

まり「そう(笑)。だから全部が予想外の方向に転がっていったんで、最終的にこのアルバムは、〈ああ、こうきたか〉って自分たちですら思うみたいな感じかも(笑)。でも、私たちのおもしろさのわかりやすい提示はできたかな、って。あとカッコ良さも」

 

カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2010年05月05日 18:01

更新: 2010年05月05日 18:49

インタヴュー・文/土田真弓

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