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インタビュー

NANA starring MIKA NAKASHIMA

ギターの轟音をバックに絞り出される歌声……作品ごとにさまざまな表情を見せる中島美嘉が美しく気高いNANAの姿で、最初で最後のアルバムをリリースする!!

カッコイイというより〈気持ちイイ〉感じ


写真/アミタマリ

  映画版「NANA」の主役に中島美嘉が抜擢された時、原作を読んでいた多くのファンが〈適役だ〉と称賛したものだった。しかし一方で、流麗なメロディーをその壊れそうなほどにしなやかな歌声で聴かせる中島が、ダーティーでパンキッシュなナナ像をどこまで表現できるのか、という興味も尽きなかったというのがファンの正直な意見だろう。だが、彼女はそれを見事にやってのけた。翳りを背負ってはいるけれど実は愛らしいナナ。クールを装ってはいるものの本音は情熱的なナナ。このたび公開される「NANA2」に合わせて、NANA starring MIKA NAKASHIMA名義で発表される最初で最後のアルバム『THE END』は、そんなさまざまな顔を持つナナを演じ切った中島の、これまでにない側面が出た力作だ。

「私は綺麗に歌うタイプのシンガーで、声を張っても割れないから、初めて“GLAMOROUS SKY”を歌った時に、崩して表現することをとても難しく感じたんです。でも、実際にナナを演じてみたことで、こういう世界も自分でやれるんだな、ってことに気付いたりもしましたね」。

 映画版「NANA」では、ナナとハチ(奈々)が出会って共同生活を始める原作の序盤部分が主に描かれており、まだ戸惑いを抱いてバンド活動に向かうナナを、屈折のある表情を活かしながら中島が好演していた。この時のテーマ曲が、HYDEが作曲し、原作者である矢沢あいが作詞を担当した“GLAMOROUS SKY”だったわけだが、「NANA2」で、幾多の苦い経験を経て成長していくナナと同様に、今回の『THE END』では、これまでには決して見られなかったもうひとりの中島が、1年前よりさらに研ぎ澄まされた姿で表現されている。

「こういうロックとかパンクって、〈NANA〉をやってなければ聴く機会もなかったと思うんですよ。オフスプリングとかは好きで聴いていたんですけど、それまではああいうのをパンクだとも思わなかった。カッコイイというより、単純に〈気持ちイイ〉って感じでしたね。セックス・ピストルズについてもナナを演じることになるまで聴いたことなかったんですけど、ヴォーカルがとっても可愛く聴こえて。〈これはみんな好きになるわ〉って思いましたね。映画〈シド・アンド・ナンシー〉をビデオで観たら、やっぱり〈危ない〉って思ったりもしましたけど」。

〈大崎ナナ〉になることによって新たな音楽と出会った中島は、本作で土屋昌巳、TAKURO(GLAY)、根岸孝旨といったロック・フィールドのメンバーと制作を共にしている。さらには、セックス・ピストルズのシド・ヴィシャスによる熱唱でも知られる“My Way”のカヴァーも披露。「NANA2」のテーマ曲で、TAKURO作曲・矢沢あい作詞の“一色”をはじめ、全体をとおして中島にとってかなりのチャレンジとも言えるアグレッシヴなナンバーが揃った。〈ロックな中島美嘉〉も悪くないじゃないか。このアルバムを聴いた誰もがそう確信を持てるに違いない。原作におけるナナの内面の女性らしさがちゃんと浮き彫りになっているあたりには、むしろこれまでの中島自身の作品におけるたおやかな表現力が活かされているとも言えるだろう。

▼本文中に登場するアーティストの作品を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年12月14日 20:00

更新: 2006年12月15日 14:31

ソース: 『bounce』 282号(2006/11/25)

文/岡村 詩野