こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

インタビュー

フジファブリック


 まったくもって斬新なロック・ミュージックが生まれるなんていうことは、いまの時代、そうはない。だからこそ〈歌〉が欲しい、いい歌、いい〈日本の歌〉を乗せたロック・ミュージックが欲しくなる。そんなことを思っていた昨今、めぐり逢ったバンドのひとつがフジファブリックというバンドだ。豊かな色彩で彩られたサウンドスケープをバックに紡がれる彼らの〈歌〉は、グイグイとこの耳を引っぱったのであって……。

「いろんな人に聴いてもらいたいと思ってますからね。無理矢理聴いてもらう、っていうのじゃなくて。音楽性は豊かだけど音楽に詳しいような人しか聴かないバンドって、すごいと思うけどなりたいと思わない。それこそ高校生の人にも聴いてもらえて、音楽としてもちゃんとしてるっていうのが理想だと思ってます」(志村正彦:以下同)。

 フジファブリックは、ヴォーカル/ギター、ギター、ベース、キーボード、ドラムスの構成から成る5人組。平均年齢24歳のバンドではありながら、楽曲から垣間見られる音楽的たしなみは、その若さにそぐわない由緒正しさを感じさせてくれる。

「時代とか関係なく、グッとくるものはなんでも聴いてるんですけど、いちばんかっこいいと思うのは、ロックのクラシックと、そういうものを基盤にした日本の歌。自分が持ってるCDのなかで相変わらず聴いているものっていったら、ビートルズとか70年代のロックとか、〈オリジナル〉の人たちなんですよね。いちばん初めに衝撃を受けたのは奥田民生さんなんですけど、民生さんが載ってる本とか出るたびにチェックして、オススメCDとかで挙げていたスライとかビートルズとかツェッペリンとか聴いていった感じです」。

 由緒正しきロックの伝道者、といってもアリな彼らだが、そこは24歳そこそこの男子たち。先達に忠実な部分はそこそこ、同世代のギター・バンドたちとなんら変わらない血の気の多さも音の中から窺える……そこがまた、頼もしいところ。

「ある意味欲ばりというか、やりたいことがたくさんありすぎて、しょっちゅう壊れますからね(笑)。曲のアレンジとかって遊び半分まじめ半分って感じでやるんですけど、すごく楽しい。パワー・コード一発でリズムは8ビートで、っていうのもかっこいいんだけど、いまはいろいろやりたい時期で」。

 そんな彼らは、今年4月の通称〈春盤〉を皮切りに、〈夏盤〉〈秋盤〉とシングルのリリースを重ね、このたびファースト・フル・アルバム『フジファブリック』を完成させた。全10曲という、昨今ではコンパクトと言われるような曲数だが、1曲1曲にはさまざまな展開と表情があり、むしろスケールの大きさすら感じさせる作品だ。

「1曲のなかにいろいろ詰め込みたいっていうのがすごくあって。1曲1曲に、なにか違うものがちゃんとあって、1曲1曲をちゃんと聴かせることができる、中身の濃いものをと」。

 今作も含め、メジャー・デビュー以降、フジファブリックの良きパートナーとなっているのは、共同プロデューサーの片寄明人(Great 3)。
「いっしょに良いもの作るというより、楽しんで好きなものを作ってくれる人がいいなあと思って、片寄さんにお願いしたんですよ。第6のメンバー……って感じですかね。こう演奏しろ!とかっていう決め事とかもなくて、非常に僕ららしいものが出来てると思います」。

 最後に、今回のアルバムを制作するにあたって、〈ロック・アルバムを作ること〉というテーマが念頭にあったとか。さて、彼らにとっての〈ロック〉とは?

「そうですねえ、曲からなんらかのメッセージ、伝わるものがあることだと思います。バンドって、楽器が揃えば誰だってある程度のことはできるけど、それだけじゃ〈こない〉じゃないですか」。

 少なくとも、フジファブリックの歌は〈くる〉。

PROFILE

フジファブリック
2000年、山梨県より上京した志村正彦(ヴォーカル/ギター)を中心に結成。都内を中心にライヴ活動を開始し、2002年にミニ・アルバム『アラカルト』でデビュー。2003年1月に金澤ダイスケ(キーボード)と加藤慎一(ベース)が加入。その後、バンド主催のイヴェント〈倶楽部AKANEIRO〉をスタートさせる。同年6月にはセカンド・ミニ・アルバム『アラモード』を発表。着実にライヴ動員を増やしていくなか、今年1月に山内総一郎(ギター)と足立房文(ドラムス)が加入。2月にメジャー・デビュー盤『アラモルト』と“桜の季節”“陽炎”“赤黄色の金木犀”の3枚のシングルをリリース。ファースト・フル・アルバム『フジファブリック』(東芝EMI)が11月10日にリリースされる。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2004年11月11日 11:00

更新: 2004年11月25日 18:53

ソース: 『bounce』 259号(2004/10/25)

文/久保田 泰平