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マンボにサンバ、タンゴetc……意外と知らない多種多様な「ラテン音楽」の世界

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ロックやハードコア、ポップ、ジャズなど音楽には多種多様なジャンルがある。それぞれどういった音楽か何となくイメージがつくだろうが、では「ラテン音楽」はどうだろうか。ラテン音楽については、「陽気な音楽」「情熱的でリズミカル」「打楽器の音がする」といった程度の認識の人が多いかも知れない。今回ご紹介する「ゼロから分かる!ラテン音楽入門」は、そんなラテン音楽を“これでもか”と掘り下げた総合入門書と呼べる一冊だ。

●「ラテン」と「ラテン音楽」の定義

そもそも「ラテン」とは何だろう?「ラテン」は古代ローマで使われていたラテン語、またはラテン語を使う民族のこと。地域で言うと今のイタリア、スペイン、ポルトガル、フランスが該当する。しかし「ラテン音楽」はそれら地域の音楽ではない。

15世紀末にコロンブスがバハマ諸島に上陸して以来、スペインやポルトガルなどから多くの人々が移住、植民地化したカリブ・中南米の地域をまとめて「ラテンアメリカ」と呼ぶ。そこで生まれた音楽を「ラテン音楽」と呼んでいるのだ。

ラテンアメリカは広い地域にまたがっているため、ラテン音楽を一言で定義するのは難しい。ただし、ラテン音楽を形作るのは「先住民」「欧州」「アフリカ」の3つの要素だという。

「先住の人々」の要素が強い地域で生まれた音楽は、フォルクローレと総称されることが多い。「欧州」の影響は、上流階級のワルツなどから庶民の民謡まで幅広く、ギターの祖先から分かれた弦楽器やピアノ、ヴァイオリンなどを使う音楽へとつながる。「アフリカ」からは、なんといっても太鼓とリズムのダイナミックな躍動感がもたらされた (※注)

●ラテン音楽ってどんな音楽?

ラテン音楽には、そのリズムがどの国や地域から来たのか、また作られた時代によってさまざまなジャンルがある。わかりやすい例を挙げると、ブラジルを含む中南米をルーツとするサンバやタンゴ、カリブ海を中心としたスペイン語圏で生まれたルンバやチャチャチャなど、競技ダンスに使われる音楽をイメージすると良いだろう。

また、ラテンアメリカの国々から生まれ、別の場所で発展し定着した音楽もある。それが「サルサ」だ。サルサはキューバ音楽を基礎にし、そこへプエルトリコ音楽や米国音楽を貪欲に取り込み再生産されたもの。

“サルサの父なる島はキューバ、母なる島はプエルトリコ”といわれるが、もうひとつ付け加えるなら“生まれ育った場所はニューヨーク”だ (※注)

他にもEDMなどとのクロスオーヴァーが進み、多様なスタイルに拡張され、ポップスとしてヒットチャートに載るようになった「レゲトン」「ラテン・トラップ」などもあり、ラテン音楽の拡がりを感じさせる。

▶Mikiki記事「レゲトン/ラテン・トラップ、ラテン・ポップのいまを知るための10曲

●カラオケスナックにマラカスがある理由

日本とラテン音楽の関わりは、昭和6年から始まっている。この年、世界中でヒットしたルンバ『南京豆売り』の日本語カバーが録音、販売された。この楽曲によって、ルンバは日本でもポピュラーな音楽になっていく。その後戦争によって一旦はラテン音楽のブームが断ち切られたが、終戦後今度は「マンボ」が大流行。1952年に発売された美空ひばりの『お祭りマンボ』は若者でも知っている人は多いのではないだろうか。

その後もチャチャチャ、カリプソなどを歌う歌手が次々と現れ、1950~60年代の日本にラテン音楽ブームがやってきた。カバー曲だけでなくマンボを日本流に作り変えた「ドドンパ」の楽曲が作られたり、コメディアン・トニー谷がそろばんをかき鳴らしながら歌う『さいざんすマンボ』など、オリジナルのラテン音楽も誕生し盛り上がりを見せたようだ。

ちなみに、カラオケスナックに行くと今でも何故かマラカスやギロが置いてあるが、それは当時のラテン音楽ブームの名残である。

カリブ・中南米の地域から世界へ飛び出し、さまざまな音楽に影響を与えた「ラテン音楽」。その全てを網羅的に把握することは容易ではないが、そもそも音楽とは堅苦しく考えずに楽しむもの。本書を片手に、気になるジャンルから気楽に触れてみてはいかがだろうか。

注)「ゼロから分かる!ラテン音楽入門」より引用

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タグ : レビュー・コラム

掲載: 2025年11月16日 21:00