「自分が快適じゃないと人に優しくなんてできない」藤井隆が考える“自分と身近な人が一緒に幸せになる”ための秘訣とは

職場や家庭、友人や近所の人付き合い。人間が生きるためには、他者との関わりが欠かせない。気を遣いすぎて疲れを感じたり、自分の人生がつまらなく感じてしまう日もあるだろう。そんな人々へ「日々を快適に過ごす」ヒントをくれるのが、コメディアン・藤井隆の著書『マ・エノメーリ』だ。時代が変わっても人々に愛され、「自分のやりたいことをやる」エネルギーに満ちた藤井。活力と優しさを帯びた彼の言葉は、きっと読者の背をそっと押してくれることだろう。
●藤井隆が普段の会話の中で意識していること
藤井隆といえば、常に笑顔で丁寧な言葉選びをするイメージだ。実際彼は、普段から汚い言葉遣いを避けるよう意識しているという。「時々、怒りに任せて自分でも驚くぐらい口が悪くなる時がある」と自身を認識している藤井。そういった自身の特性を理解しているからこそ、藤井は普段から自分を律し、人と心地良い関係を築けるよう心がけているのだ。
そんな藤井にも、若い頃に口にした言葉で後悔している会話もあるという。後悔と反省を繰り返し、藤井は「必死になって喋るべきでない時は黙る」ことと「心にも無いようなことは口から発しないように」する術を身に着けていった。
●一緒にいる人に楽しんでもらうために藤井が心がけていること
コメディアンである藤井の本業は、人を楽しませること。言葉選びに気を遣う藤井には、周囲の人と楽しく過ごすための確固たる方針がある。それは、
「自分が快適ならば人にも優しくできると思うので、『一緒にいる人に楽しんでもらうために気をつける』のは『自分が楽しいかどうか』が決め手」 (※注)
というもの。この方針は、かつてタレントのYOUに言われた「自分が快適じゃないと人に優しくなんてできない」という言葉が基になっているようだ。
一緒にいる相手との関係性が変われば、その相手に対する「やってあげたい度」や「やって欲しいと甘えたい度」の度合いも当然変わる。どのような関係においても、人間関係を築く上では必ず「嫌々やらない」というのが大事なポイントであると藤井は言う。
片方が我慢して成り立つ関係は健全ではなく、「見たらわかる」ものだと考える藤井。根底に友情や愛情などの温かい感情がある関係性において、「嫌々される心づかいなら無い方が平等で良い」というのが藤井の持論だ。
それぞれの環境、関係性の下、マナーの範囲でみんなに楽しんでもらえるように心がけるけど、自分が本心で真剣に向き合っているのは、一緒にいたいと強く思っている大切な人を楽しくできる自分かどうかだけです。 (※注)
●自分の人生に「満足している」藤井隆の行動指針と座右の銘
本書の中で「藤井さんの生き方に憧れます。どういった『行動指針』をお持ちでしょうか」と問われた藤井。この問いを受け、彼はまず「自分のどのような生き様に憧れを感じてもらえているのか」という点から考え始めた。藤井の真面目で誠実な性格がよく表れた対応と言えるだろう。
検討の結果導き出されたのは、傍から見た藤井が「楽しそう」に見えたり「好きなことをやってそう」もしくは「幸せそう」と人に映るからではないか、という結論だった。藤井はこれら全てに対し、「確かにそうです。認めます」と回答。50年以上に渡る長い人生の中、辛い経験も当然数多くあった。それでも藤井は、その数よりも「恵まれてる」「ラッキー」と思えることをメインにキャッチするよう心がけているという。
暗い・明るい、ネガティブ・ポジティブはまったく関係なくて、なるべく「平等で清潔で楽しそう」な雰囲気をキャッチしてそっちへ行けるように手前の分かれ道を選んでいます。 (※注)
こういった心がけは全て、藤井が「自分と近しい人が一緒に快適に優しく過ごす」ことを中心としているが故。この小さな輪の中の生き方を大切にすることで、快適に過ごせる範囲が少しずつ社会に向けて広がっていくというのが行動指針の1つとなっているようだ。
そんな藤井の座右の銘は、「当たって砕けろ」と「倒れる時は前向きに」の2つだという。砕ける・倒れるが前提にあるのは彼自身も不思議だと感想を漏らしつつも、「それぐらい思い切ってやれ!」と自分に発破をかけているのだという。ピンチな状況で暫く困った後、「なんとかなるやろ」と腹を括った時に脳裏に浮かぶというこれらの言葉。重すぎない雰囲気で背中を力強く押してくれる、藤井の生き方にマッチした「応援フレーズ」なのだろう。
注)藤井隆『マ・エノメーリ』より引用
藤井隆主宰レーベル設立10周年記念BOX
タグ : レビュー・コラム
掲載: 2025年08月13日 20:00

