第71回青少年読書感想文全国コンクール 課題図書

小学校 低学年の部
『ライオンのくにのネズミ』
さかとく み雪 作
父親の転勤でライオンのくにに引っ越したねずみの家族。
ライオンが怖くて仕方がない子ねずみだったが、あることをきっかけにライオンと対決することに。
使う言葉も習慣も体の大きさも違う彼らはわかりあうことができるのか?
【選定理由】
柔らかな色使いだがインパクトのある絵、現代のグローバル社会を生きる子どもたちにふさわしい内容で、低学年の児童が友だちとの関わりを考
えることができる。
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『ぼくのねこポー』
岩瀬成子 作、松成真理子 絵
放課後クラブが終わった学校からの帰り道。白い家の近くでねこを見つけた。つれて帰りたいなと思ったけれど、お母さんは「だめ」っていうかもしれない。
そのとき、ぽつっとぼくの首に雨があたった。雨がふりだしたら、ねこがびしょぬれになってしまうと思って、家につれて帰った。お母さんは「すてねこなら飼ってもいいけど」といって、ねこに心当たりがないか白い家の近くにたずねにいった。でも、誰もねこのことは知らなかった。ぼくは、ねこに「ポー」という名前をつけた。
ぼくのクラスに森あつしくんという子が転校してきた。森くんと仲良くなって話していると、「家族は両親と妹と、それからねこ」といった。そして森くんは、「だけど、ねこがね、いなくなっちゃったんだよ」とつらそうな顔をした。ぼくはなんだかむねが急にドキドキしはじめた。「しんぱいだね」といったけど、どんなねこ? とは聞かなかった。どんなねこか、知りたくなかった……。
少年の心の機微を丁寧な筆致で描いた幼年童話です。
【選定理由】
主人公の心の葛藤が良く描かれており、猫を飼っていなくても自分ごとのように想像して読める文章がすばらしい。主人公の選択が、生き方として読者に光を与えてくれる。
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『ともだち』
リンダ・サラ 作、ベンジー・デイヴィス 絵、しらいすみこ 訳
様々な出会いがある子どもたちに手渡したい、友達を受け入れるまでの心温まる物語
ぼくとエトはとっても仲良し。いつも丘の上に段ボール箱を運んで遊んでいた。
あるとき、シューがやってきていっしょに遊びたいと言った。
エトはシューと仲良くする。
ぼくは仲間外れになった気がして、2人から離れていった。
「もう丘になんか行くもんか」そう思っていたある日、エトとシューがぼくを呼びにきた。「君に、いいもの作ったんだ」それは、巨大な段ボールの車!2人の遊びに加わるぼく。3人の新しい関係が始まる。
【選定理由】
友だち関係という、子どもにとって身近なテーマで、自分に置き換えて読める。シンプルだが、登場人物の世界の広がる様子が伝わる絵で、読者がわくわくする。
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『ワレワレはアマガエル』
松橋利光 文・写真
カエルと聞いて思いうかぶのは?ぴょこんと目が出て、緑色のーーそう、ワレワレ、アマガエルだろう!体のしくみや、産卵からおたまじゃくし、冬眠までを、アマガエルたちの自己紹介で、楽しく見せます。
【選定理由】
写真が鮮やかで素晴らしく、さまざまなアング
ルの写真に立体感があって、飛び出してくるような迫力がある。ページのデザインも効果的で、内容も科学的。親子で楽しむことも期待できる。
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小学校 中学年の部
『ふみきりペンギン』
おくはらゆめ 作・絵
小学3年生のゆうとは、ふみきりでペンギンの話を聞く。るりは、白いヘビのうわさを確かめたい。ななこは、鏡のなかのライオンと会う。そうすけは、天気占いをするフクロウが見える。「ふつうってなんだろう?」という不安な気持ちにたいして、決めつけず、気にせず、それぞれの子どもたちの自分らしさを肯定する。おくはらゆめの作絵による、やさしい物語。版元を超えて活動する「らいおんbooks」編集による読み物作品の第二弾。
【選定理由】
登場人物らが友情や相互理解を深めていき、「左利き」といった身近な例から「ふつうとは何か?」を考えさせる内容。やさしい文章で、自分ごととして、思いを巡らせることができる。
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『バラクラバ・ボーイ』
ジェニー・ロブソン 作、もりうちすみこ 訳、黒須高嶺 絵
バラクラバ帽をかぶった転入生のトミーがやってきた。
なぜトミーは帽子をかぶってるの? あの帽子の下には何がかくされている?
ぼくとドゥミサニのたいくつな日々は、「バラクラバ・ボーイ」によって大きく変わったんだ。
【選定理由】
転校生を迎える、という身近な体験を描いており、意外な転校生へのクラスの驚きから笑顔になるまでの構成、学校生活の面白さ、文化の違い、世界で共通する友情等を知ることができる。
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『たった2℃で…:地球の気温上昇がもたらす環境災害』
キム・ファン 文、チョン・ジンギョン 絵
気候変動による地球の温暖化は、まったなしの大問題です。2021年のノーベル物理学賞に選ばれた眞鍋淑郎さんの「気候モデル」により、CO2濃度が2倍になると地球の温度が約2度あがることが、世界で初めて計算で明らかになったのです。この絵本では、もし地球の気温が2℃あがったら、私たち人間もふくめて地球上のすべての生きものに大きな影響があることを、子どもたちにも直感的にわかるような構成と絵によって伝えます。
【選定理由】
読者にとって自分ごとになるよう、身近な話題から、地球環境の問題を取り上げている。タイトルや目を引く絵もインパクトがあり、児童が自ら考えることができるメッセージ性も評価された。
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『ねえねえ、なに見てる?』
ビクター・ベルモント 絵と文、金原瑞人 訳
科学者のママ、ゲーム好きのパパ、音楽家のおじさん…同じ場にいても、見ているもの、その見え方は全く違う。食卓を囲む家族の異なる世界を描く、多様性と共感について知るユニークな絵本。
【選定理由】
11人の登場人物によって、同じ場面がどう見えているかが視覚的に理解できる。中学年に伝わりやすい文章と絵で、「色覚異常」から「見え方」をとおして多様性について考えることができる。
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小学校 高学年の部
『ぼくの色、見つけた!』
志津栄子 作、末山りん 絵
トマトを区別できない、肉が焼けたタイミングがわからないことから、色覚障がいが発覚し苦しむ信太朗。母親は悪気なく「かわいそう」といい、試すようなことをしてくるし、症状を知らないクラスメイトから似顔絵のくちびるを茶色に塗ったことを馬鹿にされ、すっかり自信を失ってしまう。眼科の先生は個性のひとつと言ってくれるけれど、まわりがそうはとらえてくれないし…。
学年が上がり、クラス担任が変わり自分自身に向き合ってくれたことで、信太朗は自分の目へのとらえ方がすこしずつ変わっていくことに気が付く。
【選定理由】
文章がやさしく情景が想像しやすい言葉で書かれ、高学年の児童が安心して読める。誰もが悩みを抱えていることを児童に考えさせ、登場人物らの成長から、前向きな気持ちになれる。
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『森に帰らなかったカラス』
ジーン・ウィリス 作 、山﨑美紀 訳
少年と動物とのふれあいを、父親の兵士時代の心の傷をまじえつつ描く。
ロンドン動物園の元主任飼育員の少年時代の実話をもとにした、心あたたまる児童文学。
【選定理由】
とかく嫌われ者のカラスだが、本作では主人公とカラスの関係を温かく見守った人々の情愛が描かれ、心あたたまる物語となっている。読書感想文を書くにあたっても読みを深められる作品。
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『マナティーがいた夏』
エヴァン・グリフィス 作、多賀谷正子 訳
自然、家族、友だち…自分をとりまく問題が大きすぎたとき、どう立ち向かえばいい? 変化に向き合う勇気をくれる、ひと夏の成長物語。
【選定理由】
多彩な登場人物から、読者が自身や家族、友だちの姿と重ねて物語の中に入っていくことができる。マナティー保護の描写から、生き物との付き合い方を考え、未来への思いを広げられる。
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『とびたて!みんなのドラゴン:難病ALSの先生と日明小合唱部の冒険』
オザワ部長 著
難病ALSと闘う先生が合唱部の顧問になった。合唱は未経験。大丈夫?でも熱意と子どもたちとの絆で初の全国大会出場金賞受賞に導いた!実話をもとに描く感動の物語。
【選定理由】
練習場面・合唱場面の心理描写が巧みで、熱心に取材したことが伝わってくる。分量や難易度も高学年に適切で読みやすい。高校生向け作品の多い著者だが、本作もクオリティが高い。
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中学校の部
『わたしは食べるのが下手』
天川栄人 作
少食で食べるのが遅い葵は、食事の時間が苦手。とくに給食は……。「小林さんさ、たぶん君、会食恐怖症だわ」。無理して油淋鶏を飲みこんで気持ちが悪くなった葵は、保健室でクラスの問題児、咲子にそう言われる。実は咲子も食にまつわる問題を抱えていた。咲子の勢いに押されて二人で給食ボイコットを企てるも、あえなく不発。反対に新任のイケメン栄養教諭に焚きつけられて、給食改革に乗り出すことに……。
【選定理由】
「食」という身近なテーマを扱い、主人公らの設定から、どの生徒にも事情があることを読者に気づかせ、世の中の矛盾を生徒目線で考えられる。大人への戦いではなく、解決を探る努力を描く。
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『スラムに水は流れない』
ヴァルシャ・バジャージ 著、村上利佳 訳
家族の絆、友情、そしてインドの「今」を描く、勇気と成長の物語。
【選定理由】
グローバルな視野を与えてくれ、世界を知っていくドキドキ感が、若干のサスペンス的要素とともに経験できる。主人公の行動にどう反応し、どのような読書感想文が書かれるかが楽しみな作品。
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『鳥居きみ子:家族とフィールドワークを進めた人類学者』
竹内紘子 著
鳥居きみ子の夫は、「知の巨人」ともいわれ、明治から昭和時代にかけて活躍した人類学者、鳥居龍蔵です。彼の生涯や研究業績を紹介した本はたくさんありますが、きみ子のことはこれまで紹介されたことがほとんどありません。じつは、「家族とともに調査・研究する」という形で、女性の活躍が厳しい時代を生き抜いた先駆的な研究者なのです。人類学のなかでも、昔から伝わる生活・風習・伝説・歌などを調べる民族学を切り開きました。その生涯をはじめて伝える一冊です。
【選定理由】
明治・大正・昭和時代の女性の活躍を主題にし、鳥居きみ子の情熱に火をつけてくれた人々の描写やフィールドワークについての説明も興味深く、伝記以外の部分でも読後の世界が広がる。
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高等学校の部
『銀河の図書室』
名取佐和子 著
「ほんとうの幸い」って、何だろう?
瑞々しく、愛おしく、胸に響く傑作青春小説!
【選定理由】
先輩の不登校の謎にせまるため、宮沢賢治の作品を読み解く過程に賢治へのオマージュが込められ、登場人物たちそれぞれが抱えている背景から、さまざまな角度の読書感想文が期待できる。
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『夜の日記』
ヴィーラ・ヒラナンダニ 著、山田 文 訳、金原瑞人 選
ニューベリー賞オナー賞受賞作!
イギリスからの独立とともに、ふたつに分かれてしまった祖国。ちがう宗教を信じる者たちが、互いを憎みあい、傷つけあっていく。少女とその家族は安全を求めて、長い旅に出た。自分の思いをことばにできない少女は亡き母にあてて、揺れる心を日記につづる。
【選定理由】
主人公の日記が『アンネの日記』を彷彿とさせ、日本人にとって縁遠い宗教問題や、高校生にとってアジア史を知り、世界を知ることができる作品。さまざまな気づきを得た読書感想文が期待される。
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『「コーダ」のぼくが見る世界:聴こえない親のもとに生まれて』
五十嵐 大 著
【もし、親の耳が聴こえたら――なんて、想像もつかなかった。】
ときに手話を母語とし、ときにヤングケアラーとみなされて、コーダは、ろう者とも聴者(ちょうしゃ)とも違うアイデンティティをもち、複雑な心を抱えて揺れ動く。
日々の通訳、聴こえない親とのコミュニケーション、母語としての手話、手話歌や「感動ポルノ」との付き合い方、マイノリティとして生きること。作家である著者が、幼少期の葛藤や自身のなかにある偏見と向き合いながら、コーダの目で見た世界を綴る。
【選定理由】
聴覚障がいの親のもとに生まれた子どもたち「コーダ」を取り上げたノンフィクション。著者の経験から、コミュニケーションとは、言語とは何かを高校生に考えてほしい一冊。
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読書感想文がスラスラ書ける本
ドラえもんの国語おもしろ攻略 読書感想文が書ける
タグ : 書籍
掲載: 2025年06月05日 12:00

