ワン・ステップ・フェスティバル、日本のロックフェスの先駆けとなったイベントでの貴重なライブ音源の数々
ウッドストックに触発された福島郡山の一青年が主催、仲間と共に4年がかりで作り上げ、内田裕也と石坂敬一がプロデュースを買って出て、1974年8月福島県郡山で行われた「ワン・ステップ・フェスティバル」。

「街に緑を!若者に広場を!そして大きな夢を!」を合言葉に8月4日から10日まで、39組の日本ミュージシャンに加え、アメリカからはヨーコ・オノ&プラスティック・オノ・スーパー・バンドとクリス・クリストファーソン&リタ・クーリッジも参加した日本初のロック・イベントであり原点である。
初日8月4日の2番目に出演したサンハウスの演奏全てを収めたものである。結成4年目にして地元博多では知らぬ人はいないとまで言われた人気バンドのレコード・デビュー前の油の乗り切った時期の最高の演奏を聴かせてくれる。
8月9日に出演しためんたんぴんの演奏全てを収めたもの。この年、渡米した佐々木忠平はグレートフル・デッドの洗礼を受けて帰ってきたばかり、“北陸のグレイトフル・デッド”と、この時のステージが全国区的な知名度を得るきっかけとなった名演中の名演として知られている。
8月8日、シュガーベイブの次に登場したセンチメンタル・シティ・ロマンスとはちみつぱいの演奏を続けて収録したもの。センチメンタル・シティ・ロマンスには、シュガーベイブがコーラスで、同郷のいとうたかおがギターとコーラスで参加、翌75年に発売されるデビュー・アルバムの中の曲に加え、オリジナル・アルバム未収の「風景」をラストに披露している。続いて登場したはちみつぱいは3ヵ月後の解散を前に円熟した演奏を。オリジナル・アルバムにはないオープニング用のインスト・ナンバー「夕日のプレリュード」、オクノ修と本多信介の共作「ミスター・ソウル」や名曲「月夜のドライブ」の前に演奏される長尺ジャムナンバー「ラティーノ」など聴きどころ満載。
初日8月4日に出演したイエローの演奏を全て収めたもの。この前年11月に結成されたばかりだがニュー・ソウル的なファンキーでスペイシーなサウンドがウッドストックのサンタナを彷彿させる熱演ぶりで、その短い活動期間の中でもベスト・パフォーマンスと呼べるステージだった。
2日目8月5日に出演したエディ潘&オリエント・エキスプレスの演奏全てを収めたもの。洗練されたファンキーなブラス・ロックを4管編成で展開、ジョン山崎も加わった熱いステージは、唯一のライブ音源として貴重なものである。
2日目8月5日に出演したつのだ☆ひろ&スペース・バンド、そのステージをMC含めて全て収録したもの。キャプテンひろ&スペースバンドがメンバーを一新した実は本ステージがデビューライヴながらフライドエッグ時代の曲やヒット曲「メリージェーン」含む熱演だった。
3日目8月8日のトリに出演したミッキー吉野グループの演奏をアンコールまで全てを収録したもの。3年間のバークリー留学から帰国直後のミッキー吉野がアイ高野(カーナビーツ~ゴールデン・カップス)や藤井真一(ジプシーブラッド)らと結成した新グループでノリにノッた演奏で会場を沸かせた。(M5)「It’s Nice to Have You, Baby ! 」は後のゴダイゴ・サウンドの萌芽が見られる貴重な録音である。
初日8月4日の大トリで出演した沢田研二&井上堯之バンドの演奏をMCまで漏らすことなく全て収めたもの。この年7月の日比谷野音から始まった全国縦断コンサート“ジュリー・ロッキン・ツアー'74”の最中ということもありセットリストもそれに準じたステージを展開、アンコールまで一切の手抜き無くプロ中のプロの演奏だった。発売したばかりの「追憶」や「恋は邪魔もの」「気になるお前」などのヒット曲から、内田裕也がボーカルで参加したロックンロール・スタンダードのカバーまで、予定時間をオーバーした沢田研二のロック魂溢れる全64分。当時の芸能界とまだアンダーグラウンドであったロックとの関係を知る上で最良の歴史的資料でもある。
4日目8月9日の大トリで出演したかまやつひろし&オレンジの演奏全てを収めたもの。バック・バンドのオレンジは、シンガー・ソングライターとして大ブレイクする山本達彦、ウォッカコリンズの横内タケ(後にTENSAWや佐野元春ハートランドに参加)、浅野孝已の弟でゴダイゴ2代目ドラマーの浅野良治、後に荒井由実のツアー・メンバーとなる石井治郎からなる。「バンバンバン」「どうにかなるさ」などヒット曲を白スーツとロッド・スチュアートばりのマイクスタンド・パフォーマンスで客席を沸かせ、また発売したばかりの吉田拓郎とのデュエット・シングル「シンシア」も披露するなど全10曲。ロック・アーティストとしてのかまやつひろし、その美学が存分に味わえる最高のライヴ・アルバムである。
4日目8月9日に出演した上田正樹の、有山淳司とのアコースティック・セッションと、結成したばかりのサウス・トゥ・サウスにホーン・セクションを伴った大編成のバンド・セッション(サポート・ゲストに石田長生)の2部構成、そのステージをMC含め全てを収録したもの。すでに関西では注目されていたが、それ以外ではほぼ初披露という状況で、次第に熱狂の渦に巻き込んでいく凄まじい様子がこの演奏からわかる。これからブレイクしていく丁度その時期の最高のグルーヴとダイナミックなパフォーマンスは、翌75年に発売されたアルバム『この熱い魂を伝えたいんや』に満足出来なかった方々に、これがサウス・トゥ・サウスだ!と自信を持ってお勧めする最高のライブ・アルバムとなるでしょう。
3日目8月8日、シュガーベイブの前に登場、お馴染みの鳥居のオブジェを後方にセットし派手な衣装とメイクでキメた加納秀人を中心に八方破れなパンキッシュな演奏で異彩を放った外道、そのパフォーマンス全てを収めたもの。翌9月にミッキー・カーティスのプロデュースでデビュー・アルバム『外道』を発表するその直前のノリにノッた演奏は、四人囃子、イエロー、サウス・トゥ・サウスなどと共にワンステップ・フェスティバルのベスト・パフォーマンスとして挙げられる。代表曲「外道」「ビュンビュン」や内田裕也賛歌の「ロックンロール・バカ」まで全10曲、最高のロック・トリオによる最高のライブ・アルバムとなった。
8月5日のトリに出演した四人囃子の演奏全てを収めたもの。昨年発売した「1974郡山ワンステップフェスティバル永久保存盤21枚組ボックス」に収められたものはエアー録音であったこと、また「空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ」がごく一部しか収録できなかった、のであるが、新たにミキサーからのラインアウトのテープが発見、そこにはこの日の全貌が収められ、また音質と各楽器のバランスが飛躍的に向上!それを初めてCD化したものである。もちろんベース中村真一時代の貴重なもの。後に岡井大二氏が「そこにいた人じゃないとわからないようなステージ上と観客のグルーヴは、もしかするとピカイチかもしれませんね」と語ったとおり四人囃子の1つのライブ作品として重要なアルバムとなるだろう。
8月5日に出演したクリエイションの演奏全てと最終日10日の内田裕也&1815ロックンロール・バンドの演奏6曲うち3曲を合わせたものである。世界標準となった日本ロックを代表する名盤「CREATION」の録音を目前に控えた油の乗り切った時期の最高の演奏を聴かせてくれる。全編に渡り絶妙なコントラストを描く竹田、飯島のツイン・リード・ギターの他に、松本のベースをフィーチャーしたジャム・ナンバー(M5)や、この数年後バンドがファンキー路線になっていくその萌芽が見える樋口のハネる4分に及ぶドラム・ソロ(M7)など50分に及ぶステージ。“英語によるオリジナル・ハード・ロック”を確立された瞬間でもある。
最終日8月10日に出演したサディステッィク・ミカ・バンドの演奏全てを収めたもの。名盤『黒船』のリリース(同年11月)を控え、「塀までひとっとび」からスタート、中でも小原礼が作ったラテン・ロック・フレイバー溢れる12分近くの「ロックンロール・バンド」は本盤でしか聴くことが出来ない貴重なもの、またこの頃のライブ定番「銀座カンカン娘」も初めて収録、さらに定番ナンバー「タイムマシンにお願い」は珍しいアレンジで、など聴きどころ満載の40分弱のステージをMCまで漏らすことなく丸ごと収めた。単なる記録ではないミカバンドの1つのライブ作品として重要なアルバムだ。
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掲載: 2020年01月09日 15:52