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アルフレッド・ロドリゲス(Alfredo Rodriguez)、ニュー・アルバム『The Little Dream』

Alfredo Rodriguez

photo Anna Webber

 

2012 年にデビュー作をリリース。一作ごとに作品の世界観を広げ、前作では、セネガル出身、当代を代表するクリエイターとなったリチャード・ボナ、またレバノン出身、新進気鋭のイブラヒム・マーロフ他、多彩なゲストを迎えて一層の注目を集めましたが、本作はグッとシンプルに、トリオ編成でのリリースで新たなる挑戦をみせてくれています。

メンバーは、昨年2017 年ブルーノートに来日した時と同じメンバー。その際に、アルフレッドは、「すでにこのトリオで録音は終わっているんだ」と本作のことを語っていましたが、本メンバーでは、何年にもわたって数々のツアーをし、演奏を重ねているとのこと。つまり、レギュラーとしての活動を結実させた位置づけの一作となります。

アルフレッドは、現代の世界情勢に危惧の念を抱きつつ、曰く、「本作『ザ・リトル・ドリーム』には、小さな夢が、壮大なリアリティにつながって、明るい未来を築きあげるのだということを、希望に満ちた子供たちに示したかった。今は世界に橋を架けるかわりに壁を創ってしまっているけれど。この世界に住んでいる人々は思っているより違いがなくて、似たものを持っていると自分では思っている。だから、素直に物ごとに反応して、素直に演奏したい。それがよりよいものに自然につながると思うから」とのこと。そんなアルフレッド。本作は、言葉が示すように、自らの経験が自然に滲みでた演奏が、印象的に響きます。

デビュー作から関わったマイケル・オリヴェーラに対して、新しく加わったムニル・ホッスンはブラジル出身、ジョー・ザヴィヌルの遺志を継ぐザ・シンジケートの一員にもなった経歴の持ち主。そうしたことにも影響されてか、オープニングは実にカラフルかつ壮大!ジョー・ザヴィヌルは、晩年、世界の音楽を取り込み、その要素を消化してクロスオーヴァーした音楽をクリエイトしてきましたが、このオープニングは、往時のヴァイブレーションが、現代に継承されていることを証明するかのよう。渦を巻くようなグルーヴ感や、躍動するビートと共にヴォイスが交錯する展開は、巨大なアメリカのポップ・ミュージックの世界の影響を受けながら、世界の音楽がシンクロしています。タイトル曲M2 は、そんなポップさと共に、可憐なメロディが魅力的。この辺りには、アルフレッドが表現したい“Dream< 夢> をもつことがもたらす大切なもの”が表現されているかのようです。もちろん、ルーツ的な要素が忘却されることはなく、キューバン・スタンダードの“ベサメ・ムーチョ”を演奏するほか、クラーヴェの進化形を見せるようなM5 のようなナンバーも。一方、そうしたナンバーの中に、アルフレッドが基礎として受けたクラシックの要素もあり、アラビックなフレーズもあれば、アフリカンなグルーヴとメロディあり、スパニッシュな哀愁も混じり合います。

前作は、自らが描きたい音楽を、それぞれ、ルーツにもつアーティストをゲストとして迎える形で奏でてきましたが、本作は、それらのアーティストの世界を取り込んで、自らが表現する展開を見せるアルフレッド。本作を聴くとクインシー・ジョーンズが見込んだ大器の無尽蔵な才能も感じます。

クインシー・ジョーンズに見出されることによって自らが大きなDreamをいだき、希望を現実にしてきた32歳のアーティストの今。確実に表現を深めるアーティストの今を感じさせられる一作です!

メンバー:Alfredo Rodríguez(p, vo, rhodes), Munir Hossn(g, el-b), Michael Olivera(ds, perc)

掲載: 2018年01月16日 18:46

更新: 2018年03月08日 10:45