イザベル・ファウストら豪華ゲストが集う! 充実著しいメルニコフによるヒンデミットのソナタ集

充実著しいメルニコフが、ヒンデミットの室内ソナタ作品を録音しました。
自身楽器演奏に長けていたヒンデミットは、管弦楽を構成する様々な楽器とピアノのために30のソナタを書きました。どの作品も、メロディと伴奏、というかたちではなく、対等な対位法で書かれた、両者に高度な技術と集中が要求されるものばかり。近年ますます雄弁になり、闊達さも冴えてきているメルニコフのピアノに全篇を通して耳が釘付けです。各楽器奏者に迎えたゲストも、イザベル・ファウストを始めとする豪華な顔ぶれ。注目の1枚です。
ヒンデミットを積極的に取り上げ録音したピアニストには、グレン・グールドがいます。対位法の父ともいえるバッハの作品をあれだけ弾き込み、録音も数多く残したグールドは、ヒンデミットのことを現代のすぐれたフーガ作曲家と賞賛していました。そんなグールドのヒンデミット演奏は、まるでバッハ作品を聴いているような感覚になることもあるものでした。
このメルニコフの演奏は、線的で流れるような美しさに満ちています。特にヴァイオリン・ソナタホ調では、終始柔らかな表情。一方で、空威張りする軍人を模したトロンボーンとピアノのためのソナタは、迫力の和音が連続するピアノとソロ楽器が織りなす緊迫の世界を見事に構築ヒンデミットの魅力を様々に引き出しています。
メルニコフは、ショスタコーヴィチの難物「24のプレリュードとフーガ」op.87の名録音をものしています。この作品は、ニコラーエワが演奏するバッハに強烈な印象を受けたショスタコーヴィチが作曲したもの。ショスタコーヴィチは、若いころから、バッハやベートーヴェン、ブラームスを熱心に研究しただけでなく、ヒンデミット作品も熱心に勉強していました。旧ソ連の音楽家にとって、ヒンデミットは西側の重要な作曲家の一人でした。ショスタコーヴィチや指揮者ムラヴィンスキー、さらにはピアニストのリヒテルら、ソ連の音楽家はヒンデミットを尊敬していました。
ヒンデミットもショスタコーヴィチも、当時の社会状況による創作活動への大きな影響があったこと、また、ショスタコーヴィチの最後の作品(亡くなる五日前に完成)がヴィオラ・ソナタであり、ヴィオラはヒンデミットにとっても特別な楽器であり、彼の作品は現代のヴィオラ必須レパートリーとなっているなど、この二人の作曲家には不思議な共通点があります。
グールドが現代の究極の対位法作品として我々に投げかけたのがヒンデミットであり、ショスタコーヴィチを究めたメルニコフもヒンデミットにたどりついた、というのはなんとも興味深いといえるでしょう。2013年はヒンデミット没後50年でF.P.ツィンマーマンや五嶋みどりらもヒンデミットを録音、話題となりました。ショスタコーヴィチ作品で、ニコラーエワをも超える気魄の演奏を聴かせたメルニコフ。グールドとはまた違ったアプローチの新時代のヒンデミットの登場です!
キングインターナショナル
『パウル・ヒンデミット(1895-1963):様々な楽器とピアノのためのソナタ集』
【曲目】
・アルトホルンとピアノのためのソナタ(1943)
・チェロとピアノのためのソナタ(1948)
・トロンボーンとピアノのためのソナタ(1941)
・ヴァイオリンとピアノのためのソナタ ホ調(1935)
・トランペットとピアノのためのソナタ(1939)
【演奏】
アレクサンドル・メルニコフ(ピアノ)
トゥーニス・ファン・デア・ズヴァールト(アルトホルン)
アレクサンデル・ルーディン(チェロ)
ジェラール・コスト(トロンボーン)
イザベル・ファウスト(ヴァイオリン)
イェルン・ベルヴァルツ(トランペット)
【録音】
2013年9、12月/テルデックス・スタジオ(ベルリン)
類別:新品發布
掲載: 2015年01月21日 15:00