初の時代楽器演奏で初演時代の響きを再現!~グザヴィエ・ロト&レ・シエクルによるストラヴィンスキー:春の祭典
いつか誰かがやるんじゃないかと、期待が膨らんでいた時代楽器演奏での「春の祭典」。遂に演奏したのは奇才として知られる指揮者グザヴィエ・ロトとその手兵レ・シエクルでした。こだわり抜いた細部の表現から溢れる音は目から鱗が落ちる衝撃度です。
これはとんでもない衝撃。ついに「春の祭典」と「ペトルーシュカ」の時代楽器による録音が登場しました。時代考証に則した演奏による近代名曲を次々リリース、今最も注目される奇才指揮者のひとりフランソワ=グザヴィエ・ロト。誰が最初に手掛けるかと思われた「春の祭典」、ロトがやってくれました。どちらも1900年前後に作られた、主にフランス製の楽器と奏法を用いているのはもちろんながら、改訂魔だったストラヴィンスキーゆえに版の問題も、ここでは初版により、まさに初演時に響いた音を再現しています。「春の祭典」は1913年5月29日、モントゥーの指揮によりシャンゼリゼ劇場で初演され、音楽史上最大のスキャンダルとなりました。今日では人気曲として、またオーケストラの性能を披露できる好個の楽曲として頻繁に演奏されますが、複雑な変拍子、無理な楽器法など、古楽器あるいは古楽指揮者には不可能な作品とされてきました。ここでは、まず冒頭のファゴット(1900年ビュッフェ・クランポン製バソン)の音から未知のもので衝撃度満点。また小型のフレンチ・チューバ、小トロンボーンも新鮮で、ピストン・ホルン8本の響きも独特。ロシア的な重量感あふれる音で奏されるのが常ですが、この明るいフランス的音色こそまさに初演時の音。目から鱗が落ちる衝撃度です。
また「春の祭典」初演時1913年版楽譜は自筆のままでパウル・ザッハー財団が所蔵していますが、ロトはこれと1922年ロシア音楽出版社初版のスコア、モントゥー所蔵の1920年代初頭の楽譜を検討、音の間違いとストラヴィンスキーが改訂した箇所をはっきりさせ、1913年5月29日初演時の音の再現を試みました。
「ペトルーシュカ」も初演時1911年版。四管の大編成で、協奏曲風に活躍するはずのピアノがあまり目立ちません。ここでは日本人ジャン=ヒサノリ・スギタニが1892年製エラールのピアノで美しい響きを醸し出しています。通常の交響楽団がこの版をとりあげると、もっさりと重くなりますが、ロト&レ・シエクルは大編成なことを意識させない透明さ。ことにグロッケンシュピールやチェレスタのキラキラした響きが効果的で、ロシア・バレエならではの夢のあふれる世界を創り出しています。
今回もブックレットに弦楽器以外すべての使用楽器が明記されていて、貴重な資料となっています。ロトの演奏は相変わらず才気煥発。歴史的な意義はもちろんながら、切れの良いリズム感、推進力など驚くほど魅力的な演奏を繰り広げています。
(キングインターナショナル)
【曲目】
ストラヴィンスキー:
1)バレエ音楽「春の祭典」 (1913年初版)
2)バレエ音楽「ペトルーシュカ」 (1911年初版)
【演奏】
フランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮)
レ・シエクル
【録音】
2013年5月14日 メス・アルセナル
2013年5月16日 グルノーブルMC2
2013年9月29日 フランクフルト旧オペラ座(1)、
2013年5月14日 メス・アルセナル
2013年5月16日 グルノーブルMC2(2)
※すべてライヴ
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2014年05月08日 10:34