アバド最後のルツェルン音楽祭、2013年オープニング・コンサート映像作品
2014年1月20日80歳で惜しくも亡くなった指揮者のクラウディオ・アバド。この度ACCENTUSMUSICから発売されるDVDとBlu-rayには、2013年のルツェルン音楽祭のオープニング・コンサートの模様が収録されています。この映像に収録された生気に満ちた指揮姿を見る限り、約半年後に亡くなってしまうとは信じられません。
1938年トスカニーニ指揮によるルツェルン湖畔で行われたコンサートから始まったルツェルン音楽祭は、2013年75周年の記念年を迎えました。アバドは2003年に正式に設立されたルツェルン祝祭管弦楽団の芸術監督に就任し、臨時編成ながらも一流の演奏家を集結させ、数々の名演を残してきました。
アバド最後の出演となった2013年ルツェルン音楽祭のオープンニングを飾ったこの演奏会のプログラムは、ブラームス「悲劇的序曲」(ノーノ「プロメテオ」から変更)、独唱を藤村実穂子が務めたシェーンベルク「グレの歌」、そしてベートーヴェン交響曲第3番「英雄」です。
冒頭のブラームスからアバドらしく、決して「重い」演奏ではなく、深みと歌心を込めた柔らかく暖かみのある演奏です。「グレの歌」はシェーンベルクの初期の大作で全曲2時間を超える独唱者、語り、合唱を含んだ大規模な管弦作品。ここでは間奏曲と「山鳩の歌」を演奏しており、ソリストで藤村実穂子が登場します。アバドは若い頃から新ウィーン楽派の音楽を好んで指揮し続け、1992年にウィーン・フィルと録音した「グレの歌」は完成度の高い名演として知ら
れており、今回の演奏でも作品の持つ独特のスタイルを高いクオリティで表現しています。またR.シュトラウスやワーグナーのオペラに定評のある藤村実穂子の神秘的な歌声は、聴衆はもちろんオケも心を動かされたような感動に包まれます。そして後半のベートーヴェン「英雄」。丁寧で綿密なアバドの指示により、終始適度な緊張感が保たれ、オケをよく歌わせた流麗な大きな音楽が進行していきます。遅めのテンポでじっくりと演奏され、弦楽器、管楽器群ともに乱れることのない抜群の安定感は、さすがスーパー・オケと言われるルツェルン祝祭管。
本コンサートは、アバドの音楽の豊かさを改めて感じ、これから21世紀の大巨匠としてさらなる輝きを放つ事を予感させるものだっただけに、もうその指揮姿を見ることができないのが本当に悔やまれてなりません。
ブラームス:悲劇的序曲Op.81
シェーンベルク:グレの歌~間奏曲&山鳩の歌
ベートーヴェン:交響曲第3 番変ホ長調Op.55「英雄」
クラウディオ・アバド(指揮)ルツェルン祝祭管弦楽団
藤村実穂子(アルト)
収録:2013 年8月16、17日ルツェルン文化会議センター、
ルツェルン・フェスティヴァル・ライヴ
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2014年04月16日 19:00