エドゥアルト・ファン・ベイヌムの芸術 Vol.2 ~1954~59年録音集(13-CD)
スクリベンダムより、オランダの名指揮者エドゥアルト・ファン・ベイヌム(1901~59)のアンソロジーが2組同時発売されます。このVol.2はオランダ・フィリップス専属時代の1954~59年録音をセレクトしています。
ベイヌムは1901年9月3日、アルンヘムの音楽一家に生まれ、幼少よりヴァイオリンとピアノを学び、アムステルダム音楽院入学後はピアノ、ヴィオラ、作曲を学びました。ピアニストとしてスタートした後、1927年に指揮者へ転向。1929年のアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(現ロイヤル・コンセルトハボウ管弦楽団)へのデビューが大成功を収め、1931年に同団の次席指揮者となった後、1938年からは巨匠メンゲルベルクとともに首席指揮者に就任。1945年、メンゲルベルクが戦中の対独協力のため追放されると、ベイヌムはコンセルトヘボウ管弦楽団の音楽監督兼終身指揮者に就任しました。また1949~51年にはロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者、1956年からはロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者を兼務しています。
19世紀生まれのメンゲルベルクがポルタメントやルバートを駆使したロマンティックな芸風をもっていたのに対し、両大戦間に教育を受け、青春時代を過ごしたベイヌムは新古典主義的な音楽思潮の風を受けました。第2次大戦後、新鮮なスタイルを身に着けたベイヌムの世界楽壇への登場と、華々しい活躍は時代の要請だったのかも知れません。
ところが指揮者として円熟期を迎えた1959年4月13日、アムステルダムでブラームス交響曲第1番のリハーサル中に心臓発作を起こし急逝。57歳の若さでした。突然、主(あるじ)を失ったコンセルトヘボウ管は当時30歳のハイティンクを首席指揮者に抜擢し、その後見役として当時58歳のヴェテラン、ヨッフムも同時に首席指揮者に据えたのは有名な話です。
Vol.2にまとめられたフィリップスへの録音は、ベイヌムが急逝する直前の円熟期の演奏が収められています。また「LPレコード」もモノーラルからステレオへの切り替わり時期にあたっており、ブラームスの第1&4、ドビュッシー(一部を除く)&ラヴェルの作品集、クリスティアン・バッハのシンフォニアなどはステレオ録音で収められています。Vol.1とVol.2の両方に収められたブラームスの交響曲第1番を聴き比べていただければ、ベイヌムの円熟への道を実感していただけることと思います。
Vol.1同様に当セットのいくつかの録音も、録音後すぐに日本で発売され「レコード芸術」誌で推薦盤となるなど、ベイヌムへの変わらぬ評価の高さがうかがえます。参考までに当時の批評を引用いたします。
【音楽之友社、レコード芸術第31巻第6号付録「レコード芸術」コメント付き推薦盤全記録(上巻)より】
ブラームス:交響曲第1番 レコード芸術 1960年1月号 推薦盤
ベイヌムの演奏は無理な劇的な設計をせずきわめて自然に歌わせている。しかも甘い旋律的要素と逞しい動力的な要素とが実に緊密に統一されていて、少しも抵抗を感じさせないのである。あたかも大河の流れる如くとはこういう演奏に対しての形容である。クレッシェンドの表情の緊張とテンポの安定して適切なこと。どこにも力を抜いたところがない。
ブラームス:交響曲第4番 レコード芸術 1960年10月号 推薦盤
北欧の神秘的な叙事詩を読むような第4番の曲想をベイヌムは厳しく、幻想豊かにくり広げる。コンセルトヘボウのくすんで重味のある弦のすばらしいアンサンブルはこの曲の性格に全く適している。これは力の充実した隙のない演奏だ。
ヘンデル:《水上の音楽》全曲 レコード芸術 1959年10月号 推薦盤
ベイヌムの演奏は絢爛豪華、戸外音楽としてのこの曲の特徴をよく活かしている。ことに管楽器のあつかいかたは絶妙だ。厚みと幅のある交響的なスタイルで、感覚も現代風である。ただ、テンポを速くとりすぎて落ち着きがない。もっと優美に歌わせてもよかっただろう。しかし、これはほんの小さな不満、全体の出来は見事である。チェンバロの技巧もしっかりしている。
【収録曲目】
CD01
ブルックナー:交響曲第5番 変ロ長調(19'58/15'25/13'37/22'24)
録音:12 March 1959, live - Netherlands Radio
CD02
ブルックナー:交響曲第8番 ハ短調(14'06/13'54/23'20/20'46)
録音:6/9 June 1955, Amsterdam
CD03
ブルックナー:交響曲第9番 ニ短調(22'24/09'53/26'28)
録音:17/19 September 1956, Amsterdam
CD04
①マーラー:交響曲「大地の歌」(08'46/09'20/03'04/06'49/4'17/28'12)
②マーラー:歌曲集「さすらう若人の歌」(03'48/03'48/02'57/05'04)
ナン・メリマン (メゾ・ソフラノ),エルンスト・ヘフリガー (テノール)
録音:① 3/6 December - ② 8/12 December 1956, Amsterdam
CD05
①ブラームス:交響曲第1番 ハ短調Op.68(12'31/08'43/04'38/16'17)
②ブラームス:交響曲第2番 ニ長調Op.73(13'54/09'11/04'58/08'41)
録音:① 6, 7 October 1958 [stereo] - ② 17/19 May 1954
CD06
①ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調Op.90(09'56/08'03/05'55/08'45)
②ブラームス:交響曲第4番 ホ短調Op.98(11'50/11'14/05'54/09'24)
録音:① 24, 25 September 1956 - ② 1/3 May 1958 [stereo]
CD07
①シューベルト:交響曲第3番 ニ長調D.200(08'25/03'58/03'41/04'23)
②シューベルト:交響曲第6番 ハ長調D.589(07'27/06'24/05'45/09'13)
③シューベルト:交響曲第8番 ロ短調D.759《未完成》(13'36/10'53)
録音:① 6/9 June 1955 - ② ③ 22/25 May 1957, Amsterdam
CD08
ドビュッシー:夜想曲(06'52/05'46/08'25)
交響詩「海」(08'48/06'07/08'00)
英雄的な子守歌 (03'59)
スコットランド行進曲 (05'55)
録音:27, 28 May 1957, Amsterdam [stereo]
CD09
①J.S.バッハ:管弦楽組曲第1番ハ長調BWV.1066
(6'15/1'25/2'46/1'38/3'35/2'48/2'35)
②J.S.バッハ:管弦楽組曲第2番ロ短調BWV.1067
(7'50/1'28/2'32/2'10/3'22/1'23/1'44)
③J.S.バッハ:管弦楽組曲第3番ニ長調 BWV.1068
(7'21/5'24/3'34/1'24/3'14)
②ヒューベルト・バルワザー(fl)※コンセルトヘボウ管の首席奏者
録音:① ② 31 May to 2 June 1955 - ③ 3 April 1956
CD10
①J.S.バッハ:管弦楽組曲第4番 ニ長調 BWV.1069
(8'08/3'05/1'37/4'00/2'35)
②J.C.バッハ:シンフォニア 変ロ長調Op.18-2(3'10/4'09/2'24)
②J.C.バッハ:シンフォニア ニ長調Op.18-4(4'15/3'21/2'24)
③ベートーヴェン:交響曲第2番 ニ長調Op. 36(12'20/11'39/3'38/6'42)
録音:①10 April 1956 ②6, 7 October 1958 [stereo] ③ 22 May 1954, Amsterdam
CD11
ヘンデル:組曲「水上の音楽」 (クリュザンダー版)
(4'01/2'10/8'09/3'34/3'25/3'07/1'15/1'29/3'37/2'03/3'02/1'51/2'30/1'36/1'04/0'57/1'30/1'33/1'22)
録音:1/5 July 1958, Amsterdam
CD12
①メンデルスゾーン:交響曲第4番イ長調Op.90《イタリア》
(9'55/5'31/6'02/5'16)
②モーツァルト:交響曲第29番イ長調K.201
(6'42/7'23/3'41/5'16)
③シベリウス:交響詩「フィンランディア」Op. 26(08'02)
シベリウス:悲しきワルツ Op. 44-1 (04'20)
録音:① 2/4 June 1955 ② 25 May 1956 ③ 7/8 June 1957, Amsterdam
CD13
①ラヴェル:ボレロ(15'25)
②ラヴェル:ラ・ヴァルス(11'12)
③ドビュッシー:管弦楽のための映像(06'04/07'26/06'41/07'56/04'09)
録音:① 30 June 1958 ② 25 September 1958[①② stereo] ③ 24, 25 May 1954,Amsterdam
掲載: 2013年12月13日 14:10