“世界一ギターが上手い夫婦”テデスキ・トラックス・バンド新作

デレク・トラックスとスーザン・テデスキ率いるテデスキ・トラックス・バンドが新作『メイド・アップ・マインド』をリリース。スタジオ録音としては2作目、ライヴ・アルバムを入れれば3作目となる本作。デビュー・アルバム『レヴェレーター』は第54回グラミー賞でベスト・ブルース・アルバム部門を受賞。2012年2月の来日公演では、米ローリングストーン誌が選ぶ「偉大なギタリスト100人」第16位にランクインしたデレクの比類なきギタープレイと、グラミー賞5部門ノミネート経験があるスーザンの圧倒的歌唱力を披露した。1作目とライヴ・アルバムが「自分たちの音楽の可能性を模索した作品」だとすると、本作は「遂に到達した完成形」だそうだ。メンバーは新作についてそれぞれ下記のように語る。
「本作は以前より『はっきり』とした作品になっているわ、良いと思うものを自由に表現することが怖くなかったから。」―スーザン・テデスキ
「制作中に、以前より自信をつけたということを強く実感した。ファーストの『レヴェレイター』のときは、メンバーがお互いのことを感じようとしているフェーズにいたんだ。その後世界中に1年以上ツアーに出て、ライヴ・アルバムも録音したことで、メンバー全員がお互いを理解した上でより自由に演奏できるようになった。どんな音を目指すか、といったコンセプトは一切作らなかった。この作品自体が、どちらに向かって独り歩きし、我々を導いてくれるかを自然に確かめたかったんだ。いざ『メイド・アップ・マインド』のためにスタジオに入ってみれば、皆自然体そのものだった。」―デレク・トラックス
『メイド・アップ・マインド』は前作同様、夫妻が自宅に設けたスワンプ・ラガ・スタジオで、デレクとジム・スコット(ローリング・ストーンズ、スティング、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ等)の共同プロデュースによって制作された。本作は、デレクがミュージシャンとしてだけでなく、プロデューサーとして優れていることを証明するようなクオリティーになっているそうだ。
本作より、テデスキ・トラックス・バンドは11人から10人になった。ベーシストのオテイル・バーブリッジが2012年10月に脱退したが、その後正式メンバーは増やさずに、本作ではジョン・メイヤー・トリオにも所属していたピノ・パラディノを始め、4人のスタジオ・ミュージシャンが交代でベースを演奏している。
アルバムからのシングル「パート・オブ・ミー」は60、70年代のメンフィスやアラバマ州を思わせるR&Bテイストあふれるナンバー。スーザンと、トロンボーンのS.サーモンスによるデュエットとなっている。また、アルバム・タイトル曲「メイド・アップ・マインド」は初期ボニー・レイットやデラニ―&ボニーを思わせる激しいソウル・ロック。スーザンはこの曲を「元気の出る曲よ。あれをしなさい、これをしなさい、あなたはこうなんです、と言われるばかりの少女が、女性として自分の足で歩きだす決心をする成長や変化を歌っているわ。一種の生まれ変わりを歌った曲とも言えるわね。」と語る。デレクは「この曲は、バンドの現在地を定義し、我々が自分たちのしたいことをして、やっと在るべき形を見つけたことを示している。もし気に入ってくれれば嬉しいし、そうでなければそれが僕たちなのだからしょうがないね」と付け足す。
スーザンの爆発的歌唱力と、デレクの超人的ギター・プレイも健在。ファンキーな曲からアコースティックなバラード、スライド・ギターで動きまくる曲からブルージーな曲まで、本作に収められた音楽性は多岐にわたる。日本盤はボーナス・トラック1曲を収録する。
掲載: 2013年07月11日 16:21