自らのレーベルを立ちあげ、トリッキー3年振りに帰還

自主レーベルを立ちあげての再出発にあたり、過去を振り返ったTricky はこう語る。
「長いこと自分を見失っていたんだ。俺は何かを証明しようと、躍起になってきた。ファンと、そして同時に自分を喜ばせようと頑張ってきた。でも、どっちも上手くはいかなかった。正直な話、アイランド・レコードの頃から、ずっと彷徨ってきた。直近の2 作は、自分でも良い作品だと思ってたけど、今となっては気がついてしまったんだ、どっちも別に良いもんじゃないって。これは、再び自分を取り戻した、まさしく俺のアルバムだ」
本作の冒頭を飾るPatti Smith“Gloria”のカヴァーを聴けばわかる。“Jesus died for somebody’s sins / but not mine. (神は死んだ。誰かの犯した罪によって。俺のせいじゃない)”というフレーズが不気味に呟かれるこの曲。他の誰でもなくTricky にしか、こんな醜くも美しいカヴァーは作れない。確かに彼は自分を取り戻している。収録された曲はどれも、より成熟しており、穏やかに響くものの、1st にして金字塔『Maxinquaye』との類似性を感じずにはいられない。多くの曲でヴォーカリストをフィーチャーしている点もまた、聴くものに『Maxinquaye』を想起させる。本作に招かれたアーティストは、False Idols と契約を結んだロンドン在中のフィメール・シンガー、Francesca Belmonte とFifi Rong に、ナイジェリアが生んだ次世代のスター、Nneka。また、リード・シングルである(5)“Parenthesis”は、ブルックリンのインディー・ロック・バンド、The Antlers の楽曲のリ・ワークであり、同バンドの主役であるPeter Silberman を招いている。
「このアルバムでは全ての曲に満足している。みんながこれを好きかどうかは、もはや関係ないな。俺は俺のやりたいことをやっているんだ。そしてそれこそが、俺が最初のアルバムでやっていたことだ。だからこそ、あの頃の俺は“俺”らしくいられたんだ。みんながこれを好まなくても、関係ないぜ。なぜか? 俺は、元いた場所に戻ったんだからな」
デラックス盤は、6パネル・デジパック、ミニ・ポスター封入(裏面には歌詞掲載)、Trickyロゴ・ステッカー封入、ボーナス・トラック(通常盤未収録)収録!