約22年ぶりの再録!C.デイヴィス&LSOによるヴェーバーの「魔弾の射手」

2012年秋に85歳を迎えたコリン・デイヴィスを記念するリリースが続くLSO Live。
最新アルバムは、デイヴィス指揮によるヴェーバーのオペラ「魔弾の射手」全曲。
前作ベルリオーズの「レクィエム」より2か月ほど前の、2012年の4月19日と21日に、本拠バービカン・ホールで行われた演奏会形式による上演の模様をライヴ収録したものです。
デイヴィス指揮の「魔弾の射手」といえば、1990年1月にドレスデンのルカ教会でシュターツカペレ・ドレスデンを指揮して全曲のセッション録音をおこなっていたので、デイヴィスにとっては22年ぶり2種目の録音ということになります。
マクミランへの委嘱作やニールセンの交響曲のように、デイヴィスはあらたなレパートリーに対して情熱を傾けつつ、そのいっぽうでこれまでの長きに亘るキャリアを通じて解釈を深めてきたベルリオーズやシベリウスといった納得のプログラムの総仕上げをおこなってもきました。
そうしたなかで、2006年にデイヴィスがLSOのプレジデントに就任したあたりから現在まで、いずれのケースにおいても桁違いの充実ぶりを示してきたのは、この間に構築したディスコグラフィを通じて確かめられるところで、このたびの演奏内容についても、やはりその出来ばえにはすばらしいものがあります。
それにしても、これから繰り広げられる場面のテーマをたくみに散りばめた「序曲」といい、楽譜に書き留められたうちでもっとも邪悪で残忍な描写として名高い「狼谷の場面」における緊迫感とボルテージといい、デイヴィスは年輪を重ねてかえってなおもエネルギッシュでみずみずしく、想像をはるかに上回る圧倒的な音楽で満たしています。
意外なことに、これが初の「魔弾の射手」全曲録音となるLSOにしても、2000年以降の毎シーズン必ずコンサート形式でのオペラ上演に取り組んで着実に実績を重ねており、その結果生み出されたベルリオーズやベートーヴェンのオペラ録音が物語るように、デイヴィスとの呼吸も申し分ありません。
さらに、主要キャストも、マックスのサイモン・オニール(「オテロ」)、アガーテのクリスティーン・ブルーワー(ヴェルディの「レクィエム」)、エンヒェンのサリー・マシューズ(「天地創造」)という具合に、過去のLSO Liveのリリースで起用されたデイヴィスのお気に入りで固められ、巨匠の信頼にみごとに応えています。
ドイツ・ロマン派オペラの幕開けを告げ、来たるワーグナーへの道筋を準備した画期的な傑作の魅力を余すところなく引き出したデイヴィス率いるLSOによる「魔弾の射手」。ここにまたひとつデイヴィスを代表するアルバムが加わったといえるでしょう。
なお、このたびの上演に際して、オリジナルのドイツ語歌唱に並行して、アマンダ・ホールデンによる新英語訳のナレーションを、英国の名優マルコム・シンクレアが語るというスタイルが採用され、物語のスムーズな進行と理解に役立っていました。
【曲目】
ヴェーバー: 歌劇「魔弾の射手」(全曲)[ドイツ語歌唱]
【演奏】
サイモン・オニール(テノール: マックス)
ラルス・ヴォルト(バス‐バリトン: カスパール)
クリスティーン・ブルーワー(ソプラノ: アガーテ)
サリー・マシューズ(ソプラノ: エンヒェン)
シュテファン・ローゲス(バス‐バリトン: オットカール/ザミエル)
マーティン・スネル(バス: クーノー)
マーカス・ファーンズワース(バリトン: キリアン)
ギドン・サクス(バス: 隠者)
ルーシー・ホール(ソプラノ: 花嫁に付き添う4 人の乙女)
マルコム・シンクレア(語り)
ロンドン・シンフォニー・コーラス
サー・コリン・デイヴィス(指揮) ロンドン交響楽団
【録音】
2012年4月19日&21日 ロンドン、バービカン・ホール(演奏会形式によるライヴ上演)
プロデューサー: ジェイムズ・マリンソン
エンジニア: ジョナサン・ストークス& ニール・ハッチンソン