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特集

カテゴリ : スペシャル 

掲載: 2012年05月09日 17:58

更新: 2012年05月09日 17:58

ソース: bounce 343号(2012年4月25日発行)

文/林 剛


好調をキープしたまま、さらに一歩踏み出した最高のニュー・アルバム!

 

 

もうダメなんじゃないか。2000年代前半、女優ハル・ベリーとの結婚生活が破綻しはじめた頃から、あらぬ噂を立てられ、ネガティヴな印象が付きまとっていたエリック・ベネイ。一般誌には〈ハル・ベリーの夫〉としか書かれぬ扱いの低さに歯痒い思いをしていたエリックのファンまでもが落ちぶれた印象を抱かざるを得ない状況になっていたという事実は、絶好調のいま、あえて記しておいてもいいのかもしれない。とにかく10年前のエリックは散々だった。そうしたゴタゴタのなか、『Better & Better』というタイトルで発表する予定のアルバムもお蔵入りに。そんな嵐のような出来事を乗り越えて発表したのが、サード・アルバム『Hurricane』(2005年)だった。当時は〈復活〉の二文字も躍ったが、デビュー作『True To Myself』(96年)でそのソウルネスやファンクネスに魅せられて彼を支持してきたファンからは、デヴィッド・フォスターらを起用してポップス色を強めた『Hurricane』は刺激に乏しいという意見も出たものだ。

ところが2008年、エリックのソウル趣味をストレートにぶつけたスタイリスティックス風のシングル“You're The Only One”で周囲の反応が一変する。こっち(R&B)に戻ってきた、と。実際同曲はR&Bチャートで9年ぶりに20位圏内(17位)にランクインし、長年の制作パートナーである従兄弟のジョージ・ナッシュJrやデモンテ・ポージーと組み直して仕上げた4枚目のアルバム『Love & Life』(2008年)もグラミー賞で〈ベストR&Bアルバム〉部門にノミネート。本当の復活はここにあったのだ。

 

 

大いに自信を得たエリックは、その約2年後、ほぼ全編ファルセットで歌い切る超絶バラード“Sometimes I Cry”で、さらなる高みに到達する。そして、“You're The Only One”の路線を拡大してフィリー・ソウルやディスコなど70年代ソウルへの憧憬を臆面なく打ち出したのが、5枚目アルバム『Lost In Time』だった。ここでは、前作の成功で得た資金で生のストリングス/ホーン隊を起用してリッチなサウンドを創り上げ、エディ・リヴァートとオージェイズ風の70sフィリー・ダンサーを再現し、フェイス・エヴァンス、クリセット・ミシェル、レディシらとも共演。レトロなソウルに注目が集まる時代の流れも後押しとなったのか、エリックは迷いなく己のソウル趣味を作品にぶつけてきた。〈失われた時間を取り戻す〉というタイトルは、生のサウンドの奪還という意味に加え、彼自身の人生における失われた時間の穴埋めも意味していたのだろうか。そして昨年は、3年ほど交際を続けていたマニュエラ・テストリーニ(プリンスの元妻)と再々婚し、年末には待望の女児も誕生。公私ともに絶頂を極めるいまのエリックに、かつての暗い影はない。

ここにきて自身のラスト・ネームを冠した自主レーベル、ジョーダン・ハウスを設立した(本国では長年在籍したワーナーを離れ、EMIと配給契約を結んだ)のも絶好調の証だろう。そこで第1弾シングルとして発表した“Real Love”、妻への愛を歌ったというこれがまた“Sometimes I Cry”同様ファルセットで歌いながら感極まって絶頂に達するようなバラードで、新作への期待を一気に高めた。かくして発表されたのが、通算6作目にして新レーベル第1弾となる『The One』である。

前作に続きジョージ・ナッシュJr、デモンテ・ポージーという腹心のスタッフと組んで仕上げた今回のアルバムも、冒頭の軽快なミッド・ダンサー“Harriett Jones”からエリック節が全開。“News For You”はイントロのコーラスを含めてメイズの“Happy Feelin's”を連想せずにはいられないし、“Runnin'”はジャジー・メロウなスロウだったりと、特に前半は直球な70年代ソウル・マナーで前作との連続性を感じさせる。そうした曲の多くでネオ・ソウル系の名鍵盤奏者ジョナサン・リッチモンドがペンを交えていることも特筆すべきかもしれない。

曲調がアル・グリーンの“Love And Happiness”風ならエリックの唱法もアルを彷彿させる“Redbone Girl”はリル・ウェインとの共演。そのリル・ウェインが前作の“Sometimes I Cry”を獄中で聴いて涙を流したというエピソードはいまや語り草となっているが、今回はリル・ウェイン側からの申し出で共演することになったという。前々作で黒人女性の包容力を称えた“Chocolate Legs”よろしく、ここではレッドボーンの女の子(おそらくルイジアナの混血女性のことだろう)を賛美しているのだけど、そういう意味でもニューオーリンズ出身のリル・ウェインがここでラップすることの意義は大きい。また、共演ということでは、前作に続き娘のインディアとデュエットしたダンス・チューン“Muzik”も今回ふたたび話題を集めるだろう。

一方で、“I Hope That It's You”はエリックにとって初めてのレゲエ曲だったり、以前“Poetry Girl”(サントラ『The Best Man』収録)を手掛けていたディープ・ハウス界の奇才オシュンラデがペンを交えた“Come Together”は結構マジなジャズ・ヴォーカル曲だったりと、軽く冒険もしている。そういえば、今作では「現代っぽさも打ち出す」と語っていたが、それはシンコペイトするビートがいまっぽいポップなミディアム“Lay It Down”のことなのだろうか。そうした部分などは〈70年代ソウル万歳〉な前作とは趣を異にするが、しかし、愛の何たるかをとくと歌い上げ、王道のR&Bシンガーたらんとする姿勢は変わっていない、というか、もはや変わりようがない。「パーフェクト」と評された前作の、もしかしたらその上を行くかもしれない好曲だらけの本作を、果たして世間はどう褒め称えるのだろう。この男は、もうダメになる気がしない。

 

▼関連盤を紹介。

『The One』にゲスト参加したリル・ウェインの2011年作『Tha Carter IV』(Young Money/Cash Money/Universal Republic)

 

▼エリック・ベネイのアルバムを紹介。

左上から、96年作『True To Myself』、99年作『A Day In The Life』(共にReprise)、2005年作『Hurricane』(Friday/Reprise)、2008年作『Love & Life』、2010年作『Lost In Time』(共にReprise)

 

 

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