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東野珠実

カテゴリ : Exotic Grammar 

掲載: 2011年11月15日 20:39

ソース: intoxicate vol.94(2011年10月10日発行)

interview & text:星憲一朗

雅楽~GAGAKU The Performing Arts survived over thousand years
《陰陽師》の時代以前から21世紀に伝えられた笙というメディア

雅楽はそれぞれの楽器が宇宙の構成要素を象徴している。まさに宮中に宇宙の森羅万象を響かせるのが雅楽の〈管絃〉である。その〈管〉にあたるのが笙と篳篥、竜笛の3つ。篳篥が地、笙は天上の光、その間の空を表す竜笛が天と地を結ぶ。人間には聴く事の出来ない音とともに笙が天の光を象徴しているという訳だ。

東野珠実による1stアルバム『Breathing Media』には古曲『調子』六曲がフルサイズで収録されている。雅楽を耳にした方ならお気付きの通り演目に入る前に2、3分程演奏されるのが『調子』だ。実際にはCDに収録されている通り壮大な曲だが、通常、雅楽の演奏会では一部しか実演されることはない。本作は『調子』の全貌が収録される世界初の録音でもある。

各曲はそれぞれ春夏秋冬の季節を象徴している。オーケストラの音合わせと違い、雅楽の場合「調子を整える」というのは楽器ではなく心理的な調律で、『調子』を演奏する事で秋なら秋の心に全体を調律する意味があるのだという。1200年以上に及ぶ歴史の中で雅楽の奏法は口伝として伝えられて来たが、中世には他の伝統芸能と同様〈秘伝書〉と呼ばれるものが残されている。そこに書かれている奏法は我々の想像とはかけ離れたものだ。例えば収録曲の『壱越調』の奏法には「水晶を板敷きに打ちこぼす」とある。なんという表現だろうか。

「実は『調子』の中にも〈秘曲〉と呼ばれていて本来は伝承の中でも限られた方だけ、という曲もあります。だから秘伝にすべきものがその文字に書かれているような部分で、「水晶を板敷きに」と言われてもそれは具体的な奏法ではないものですから、口伝で伝授する方、伝授される方の想像力がきちんと情報交換が出来た時にはじめて成立したのだと思います」

他にも〈秘伝〉の中で特徴的なのは冬を表現するには冬の風景ではなく、秋の野と春風の柳を想起せよと書かれていたりすることだ。

「現実の環境からその反対にある世界の事を思う事に美意識をもっている姿というのでしょうか。その想像力というか、そこに日本人のポテンシャルと言うか、何かを前に進める力の源や能力を感じるんですよね。特に『盤渉調』は冬の楽曲なのですが、しんしんに冷えた空気感が、初めの音が出た途端に辺りに深く滲み渡ります。かと思うと『双調』は春の曲ですけれども、曲の前半あたりでたった二つの音を重ねただけで物凄く倍音が非常にリッチな状態、私の聴く能力を超えるくらい音が拡張しているな、という音の発生の仕方をするんです。物理的な現象としてもそれは起こっていて、他の森羅万象と同じ様に、一個の人間が掴みきれない情報というのは世界に沢山あって、どうやって自分のものとして血肉としていくか。一個の人間の選択や判断を音の宇宙の中から自分が見いだして行く喜びでもあり、使命のようなものを感じるんですよね」

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写真:©Takeshi Sera

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