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特集

インタヴュー 立川談志

カテゴリ : Exotic Grammar 

掲載: 2010年07月27日 18:46

更新: 2010年07月27日 20:35

ソース: intoxicate vol.86 (2010年6月20日発行)

Interview & text:草柳俊一(レコーディング・エンジニア/落語研究家)

写真:橘蓮二

今世紀になってからの立川談志の高座を収めたDVD『立川談志大全』が発売されます。談志師匠は、喉の調子がまだ戻らないとはいえ、すっかり元気になられました。いつも高座の後で録音役(今回のDVDもその音が使われている)なので、ちょいちょい芸談・雑談はするものの、改まってインタヴューとなると、なんだか妙な心持ちでありました。お互い落語大好き同士、脱線につぐ脱線になってしまいましたが、今回のDVDにまつわる話をお聞きしました。

 

「芝浜」のこと

──お久し振りです。私は今年になって入院されてる間、DVDの編集をずっとやっていたので、毎日声は聴いていて、いつも家元と一緒にいた様な気がしてますけど。

編集って、切ったり貼ったりするの?

──DVDはそれができないんですよ。絵が飛んでしまいますからね。収録場所がさまざまで、ホールの響きも違います。その響きは生かしつつ、最大公約数でレベルやら声の聞こえ方を平均化するんです。それと、私が録らせていただいたのは、2003年からですから、その頃から、声の調子がその日によって良かったり悪かったりする。それを聴きづらい声にならないように直していくんです。画面の中でもさかんに「ごめんね。こんな声で」みたいなことをおっしゃっている。

今の映像ってのは、どの位置から撮っているわけ?

──一番後ろですね。

すると、この間の「芝浜」も一番後ろから撮って、あのくらいになっているわけだ。それをテレビで観る事もできるわけだ。ホォー。

──私なんか、いつも後ろか横で聴いてますから。正面から見てないんです。あの「芝浜」も今回の映像で初めて観たんです。あの時はヘッドフォンから流れてくる客席の空気に凍りついてました。

そうね。俺も凍りついちゃったけど、客席もそうだったね。

──そうなんですよ!だからアレはノーカットで全部はいっていますよ。枕の導入からね、最初は客席もわりとゆったりとしていたのが、本編に入って、女房の演出がいつもと違うっていうところに来たときに、お客さんが引き込まれていく雰囲気が、私は音だけしか聴いていないんですけども、感じたんですよ。もちろん自分も感じているんですが、それが、客がじーっと聞き入る空気があって。その瞬間に、これはすごいことになったかもしれないって。

(写真家の)橘君もシャッター押せなかったって言っていたけどね。

──そういう雰囲気でしたよ、この「芝浜」は。その空気は、DVDで見る人でもわかると思うんです。
あのシチュエーションを変えたっていうのは、出番前に考えていたんですか?

いやいやもともとね、「芝浜」の原作っていうのは、人情噺みたいで嫌で、女房が亭主のためにやったんだっていうのがみえみえでね。「私のやったことは悪かったかね、悪くないよ」っていっているけど、そのバックには「どうだ」といわんばかりみたいな了見もみえないことはないんでね。それが嫌なんで、全部自然にそうなっちゃったんだという演出には変えていましたけどね。だけどあの時の事を具体的にいうと、女房のほうから「私お酒飲む」って言い出したのは、あの場の感情注入っていうかな、勝手に言い出したんだ。だから落語の神様が降りて来た様だと。

──あと、女房の性格を変えたじゃないですか。かわいいだけの女房じゃなかったですよね。

いや、前の女房はね、かわいいっていうより健気な女房でね。あんまり好きじゃなかったんだよね。

──本来だったら私もこの間の女房の演出のほうが家元が好きなタイプなんじゃないかと。

うん。そうだと思うよ。だってあんなことされたら、普通だったら下手すりゃ、女こしらえるよね。(笑)あんな立派な女じゃたまらないってんでね。

──あれは、もう一度やれといわれてもやりにくいですよね。

出来過ぎただけにもうやりにくいねぇ。それと、ふっと考えてやったことはニ度目にやるともうふっと考えたことでなくなるから、それにもう飽きちゃうわけね。

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