
〈重たい曲は嫌だ〉っていうのはあった
――では、石井さんはどういうところを出そうと?
石井「どういうところを? 楽曲で、ですか?」
――はい。
石井「そうですね。なんか、歌がガッツリしてるものっていうか……そろそろそういう感じになろうかなと思って(笑)」
――前もガッツリしてたじゃないですか。
石井「いやいやガッツリしてないです。頭で考える感じ? 俺、ちょっと機械的なんですよ」
――機械的?
石井「突然そんなこと言ってもわかんないか。曲の作り方とか、考え方もそうなんですけどね。何をするにしてもけっこうそうかな。そういうんじゃなくてこう、フィーリングみたいなこと? あんまり考えずに、何10年、それこそ20年近く音楽作ったりしてれば、いろんな引き出しがあったりするじゃないですか。そういうところを躊躇せず、ドカンと出しちゃおうか、みたいな」
――躊躇せずっていうのは?
石井「どこの引き出し開けようかな、みたいなのじゃなくて」
――何かを狙う、とかじゃない?
石井「うん、全然狙う必要もなかったというか。狙ってコケたら恐ろしいですからね」
――確かに。いままではちょっと狙ってた部分も?
石井「いままでは、狙ってもコケない、ってわかってたんで、狙ってた時はありますね、確かに。で、それはコケてないし。わかるじゃないですか、そういうのって。いまなら大丈夫、とか、いまやっちゃだめだ、とか。それわかるかわかんないかって、重要だったりしますよね。俺、わかるんですよ(笑)」
――(笑)そうやって、石井さんと青さんで曲を持ち寄って『10』が出来たと。
石井「持ち寄って、っていうのはちょっと違うけど(笑)。まあちょっと変わったやり方で、って感じです……変わった、っていうか」
――どっちですか(笑)。じゃあ『10』はどういうふうに制作されたんですか?
石井「とりあえず、各々がデモみたいなのを作るわけですよ。それを、全員が俺にくれるわけですよ。それで、そのデモを、最終的に作り変えていい権限を俺は得ていたんです(笑)」
――プロデューサー的に?
石井「プロデューサーってことでもないけど、作業効率的に。みんな、いろんな仕事をしてたりしてますから、リハーサルにみっちり入って曲作りをするなんてことはできなかったんですね。だから、各自のデモをもらって、アレンジしたり、モノによっては歌詞を書いたり、歌をつけたり、とかね。そういうことを、自分の曲含め、1回俺んとこきて、最終的に、俺がデータをファイナルすると」
――これでいこう、みたいな。
石井「すっげえ難しいんですよ。こういう話をして、後で活字になってみると、俺がすごいいろんなことをやってたような感じになるんだけど、そういうことではないんですね」
――そうなんですか? 話を聞いててそういうことなのかなと思ったんですけど。
石井「そういうことではないんです。ここがすごい難しいところなんですよ。現代のレコーディングの作業工程みたいなのがあるじゃないですか。デモから本番で曲を録る時まで、工程があるんですよ、たくさん。誰々さんがデモを持ってきたら、それをバンドのみんなで聴いて、まず、いいか悪いか、ってのがあるじゃないですか。これはいい、これは悪い、って。で、そこで揉めたりもするでしょ。そういうことは絶対ないわけです。持ってきたものは100%やるんですよ。絶対やるんだから、まともなものにしなきゃいけないわけです。それが〈チェロ~ン、ハァ~♪〉って言ってるだけだったとしても、それをまともな曲にするわけですよ」
――それって、逆に壮絶じゃないですか(笑)?
石井「そんなことはないですけど、って話ですよ? 決め打ち的にやっていた、ということです」
――デモは必ず採用されることが前提で、受け取ったものを作品として出せるところまでアレンジする?
石井「そうですね。アレンジっていうのもそうだし、あとほら、リハーサルをやってないから、結局レコーディング・データっていうのを作らなきゃいけないわけですよね。そのようなことをやっただけです。あとはまあ、GOATBEDとかそういうので、打ち込み的なことをいつもやっていたから、シンセの音とか、そういうものは作ったっていうか」
――それで上がってきたものをみなさん聴かれて、何かリアクションは?
石井「それもまたおもしろいところで、そういうものはないんですよ(笑)。俺も欲しくないんです(笑)」
――そうなんですか(笑)? じゃあ、あっさりとレコーディングしようか、みたいな。曲出来たし、って。
石井「まあ、出来たし、というか、録る日の当日にね、スタジオ行って、今日録る曲をその場ではい、って聴くこともありますからね(笑)」
――それでやれるものなんですか?
石井「やるんですね、がんばって(笑)」
――そこは〈がんばり〉なんですね(笑)。
石井「がんばるんです(笑)。でも、良かったですよ、そういうやり方が」
――だけど、珍しいですよね。バンドの形態で。
石井「それなりに、楽しかったですよ」
――ホントですか?
石井「うん。独特な感じっていうかね。全曲、デモのクォリティーが低いっていうことじゃなくて、そういう作業だから、作り込まれてない感じがあるんですよね。みんなその場で聴いたりとかね、前日、前々日とかに聴いて、こんな感じにしようか、ってやるわけだから、煮詰める段階より前に録るわけですよ。録りながら、フレーズ考えたりとか。そういうことは別に珍しいことじゃないけど、なんか、おもしろい感じになったと思いますよ」
――ということは、録りながら変わっていった部分も?
石井「そうですね。各自のね、ギターだったりベースだったり、フレーズっていうものに関しては、もうお好きなように、というか、何にも文句は……文句って言ったらまた偉そうですけど、そういうことじゃないですから。曲全体のディテールですね。Aメロ、Bメロ、サビしかないものにサビの次には間奏があって、その次にはAメロがもう1回きて、とかそういうこと」
――そこにそれぞれのフレーズが入るということは、それぞれの個性が入るということですもんね。
石井「そうですね」
――あと『10』は、曲数が10曲じゃないですか。たぶんコンパクトなほうだと思うんですよ、cali≠gariにしては。
石井「そうですね」
――そこは狙って?
石井「レコーディングが始まる前とかに、〈重たい曲は嫌だ〉っていうのはあったんですよね。よくみんなでそう話してて。重たいってのは、ヘヴィーっていう、ズンズンズンズンの重たいじゃないですよ」
――メンタル的に、ということですよね?
石井「そうそうそう。単純に言えば、かったるい、っていうことですね。だるい感じのやつっていうのは……みんな、そういうのがすごい好きなんですけどね(笑)。好きなんだけど、今回はそういうのじゃないだろう、って。期間も決まってるし、そんな壮大な曲作ってもしょうがないし」
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