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巨匠指揮者ベルナルト・ハイティンクが引退を表明


ブルックナー:交響曲第7番 第1楽章
ベルナルト・ハイティンク指揮 コンセルトヘボウ管弦楽団
1978年10月録音

2019年に指揮活動から引退したオランダの巨匠ベルナルト・ハイティンク氏が2021年10月21日(木)、奥様とご家族に見守られ、ご自宅でお亡くなりになりました。92歳でした。
謹んでご冥福をお祈りいたします。
(タワーレコード) 2021年10月22日追記

2019年6月12日、オランダの名指揮者、ベルナルト・ハイティンク氏(90)が9月6日のルツェルンでの公演をもって引退するとのニュースが流れ、音楽ファンを驚かせています。

1929年3月4日、アムステルダムに生まれ、ヴァイオリン奏者として音楽人生をスタート。1954年にフェルディナント・ライトナーに指揮を師事し、指揮者へ転身。1957年にオランダ放送フィルの首席指揮者に就任。以来、アムステルダム・コンセルトヘボウ管、ロンドン・フィル、シカゴ響の首席指揮者、グラインドボーン音楽祭、ロイヤル・オペラ・ハウスの音楽監督、ボストン響の首席客演指揮者などの要職を歴任し、60年以上の長きにわたって数多くの名演奏をコンサートに、レコード、CDに披露し続けてきました。

日本には1962年のコンセルトヘボウ管弦楽団との初来日以来、ロンドンフィル、ロイヤルオペラ、ウィーン・フィル、シカゴ響、ロンドン響などとも幾度も来日しています。その温かく慈悲深い人となりから生まれる、作為を弄することのない誠実で包容力のある音楽、しなやかで、豊かで、各楽器が溶け合ったサウンドは、多くの音楽ファンに感動を与えています。

2019年9月6日、ルツェルン音楽祭でのウィーン・フィルとの演奏会が最後となる予定です。プログラムは以下の通りです。

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番ト長調, Op.58
ブルックナー:交響曲第7番ホ長調, WAB 107
マレイ・ペライア(ピアノ)
ベルナルト・ハイティンク指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

ペライアとハイティンクは長年の名コンビであり、日本でもモーツァルトのピアノ協奏曲第24番の名演奏を披露してくれましたし、1983~85年にはベートーヴェンのピアノ協奏曲全集を録音していました(ソニークラシカル)。滋味に満ち、息の合った名演が期待されます。

一方のブルックナーの交響曲第7番もハイティンクにとって演奏会に、レコーディングに、繰り返し取り上げてきたレパートリーです。彼は指揮の指導の際、ブルックナーの交響曲第7番を振る生徒に向かって、「神ではなく山について、もっと考えを巡らせなさい」と声をかけ、この助言に応えた生徒のサウンドは、より柔らかく温もりのある、親しみやすいものに変化した、という逸話が残っています。まさに、彼の指揮芸術の本質を物語るようなエピソードだと思います。

彼のブルックナー第7録音は意外に少なく、3種類しかありません(記事作成当時、ちなみに第8番は5回録音しています)。ここにその3種類をご紹介いたします。また、1959年のレコード・デビューから今日の歩みを試聴音源を絡めながらご紹介してゆきます。
(タワーレコード 商品本部 板倉重雄)

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番ト長調
マレイ・ペライア(ピアノ)
アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
1984年10月録音

現在は「マレイ・ペライア/アワード・コレクション」(15枚組)にのみ収録されています。米グラミー賞、英グラモフォン賞、独エコー・クラシック賞、エディソン賞、MIDEMクラシック賞、そして日本のレコード・アカデミー賞など数々のレコード賞を獲得したペライアのアルバムを集めた廉価BOXです。

ブルックナー:交響曲第7番ホ長調
(1)1966年11月、アナログ・ステレオ録音 60分15秒
アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

ハイティンク生誕90周年を記念して発売されたCD10枚組+BDオーディオのセットです。第7番の第1回録音は、ハイティンクがコンセルトヘボウ管と1963~72年に録音したブルックナー/交響曲全集(第0~9番)の一環として、1966年に録音されました。素晴らしい響きのオーケストラを率いて早めのテンポでキビキビと進めた、まだ30代の若手指揮者だったハイティンクによる瑞瑞しいブルックナーです。

ブルックナー:交響曲第7番ホ長調
(2)1978年10月、アナログ・ステレオ録音 65分19秒
アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

ブルックナーの交響曲全集を完成したハイティンク&コンセルトヘボウが、1978~81年に改めて最後の三大交響曲を再録音したもの。ゆったりしたテンポによるこれらの演奏は、彼のブルックナー指揮者としての評価を世界的に高める演奏となりました。解釈の余裕や経験の高さからなのか、とにかく稀に見る伝統的な大伽藍のブルックナーです。第7番のみはアナログ録音、第8と第9は初期のデジタル録音でした。

ブルックナー:交響曲第7番ホ長調
(3)2007年10月、デジタル・マルチチャンネル/ステレオ録音 67分31秒
シカゴ交響楽団

2006~2010年に首席指揮者を務めたシカゴ交響楽団とのライヴ録音。いかなる誇張表現をも排して、終始自然な流れを大切にするハイティンク。各声部のバランス処理とブレンド具合、遅すぎず速すぎずのテンポ設定、全曲のみごとな構成力。どの瞬間も無機的にならないのは、78歳の巨匠の境地というべきでしょう。

1959年9月 ハイティンクのデビュー録音

ベルナルト・ハイティンク

蘭フィリップス 835 033 AY(LP廃盤)
1960年リリース


ドヴォルザーク:交響曲第7番 第1楽章
ベルナルト・ハイティンク指揮 コンセルトヘボウ管弦楽団
1959年9月、ハイティンクのデビュー録音

このデビュー録音は、下記2つのBOXに収録されていますが、現在メーカー在庫切れとなっています。

 

1969年12月 ハイティンク、武満徹とメシアンを振る

ベルナルト・ハイティンク

仏Philips 6500 086(LP廃盤)
1970年リリース


武満徹:ノヴェンバー・ステップス
ベルナルト・ハイティンク指揮 コンセルトヘボウ管弦楽団
1969年12月録音

武満徹とメシアンという、日仏を代表する20世紀作品を収めた貴重な1969年のライヴ盤。横山勝也(尺八)、鶴田錦史(琵琶)の名人を迎え、名匠ベルナルト・ハイティンク指揮のコンセルトヘボウ管が、東洋と西洋の音楽空間を、それぞれ精彩にみちた響きによって描き分ける作品。

1990~94年 ボストン交響楽団とのブラームス:交響曲全集

ベルナルト・ハイティンク

TOWER RECORDS PREMIUM CLASSICS
PROC-1478


ブラームス:交響曲第4番 第1楽章
ベルナルト・ハイティンク指揮 ボストン交響楽団
1992年4月録音

現在、タワーレコード企画盤プレミアム・クラシックス・シリーズにて入手可能です。

 

2002年12月 シュターツカペレ・ドレスデンとのブルックナー第8

ベルナルト・ハイティンク

独Profil PH14002(6枚組)
2018年リリース


ブルックナー:交響曲第8番 第4楽章
ベルナルト・ハイティンク指揮 シュターツカペレ・ドレスデン

ハイティンクは2002年から2004年までシュターツカペレ・ドレスデンの首席指揮者を務めました。就任直後の8月にドレスデンは洪水の被害にみまわれ、本拠地ゼンパーオーパーが浸水して使用不可能となりました。当アルバムには同年9月2日と29日のハイティンク・シュターツカペレ・ドレスデン首席指揮者就任記念コンサート・ライヴが収録されていますが、ドレスデン文化宮殿にて開催され、犠牲者に捧げられました。その2ヶ月後には復旧したゼンパーオーパーでブルックナーの交響曲第8番が演奏されました。しずれも当時73歳のハイティンクの円熟と高揚感が理想的な均衡した神業を堪能できます。

2008年5月 シカゴ交響楽団とのマーラー:交響曲第1番“巨人”

ベルナルト・ハイティンク

米CSO Resound CSOR901902
2009年リリース


マーラー:交響曲第1番“巨人”~第4楽章
ベルナルト・ハイティンク指揮 シカゴ交響楽団

巨匠ハイティンクがマーラーを得意としていることはよく知られていて、「巨人」については、交響曲全集録音の最初期1962年にコンセルトへボウ管(RCO)とセッション録音して以来、1972年に同じくRCOとセッション録音で、さらに1977年にもRCOとはライヴ録音しているほか、1987年にベルリン・フィルともセッション録音しています。このいわば定番曲に「ハイティンクとシカゴ響は、確信と活力とゆとりまでみせつけ」(シカゴ・サン・タイムズ)ています。

2017年5月 バイエルン放送交響楽団とのブルックナー第6

ベルナルト・ハイティンク

独BR 900174(11枚組)
2019年リリース


ブルックナー:交響曲第6番 第1楽章
ベルナルト・ハイティンク指揮 バイエルン放送交響楽団

ハイティンクはバイエルン放送交響楽団とは長い間良好な関係を築いており、このBOXに収録された音源でも、ハイドン、ベートーヴェン、ブルックナー、マーラーとウィーン古典派からロマン派の音楽で目覚ましい演奏を披露。なかでもハイドンの「四季」は今回初収録の音源であり、大規模な声楽パートを操り、躍動的で生き生きとした音楽を紡ぎ出しています。

2002~2019年 ロンドン交響楽団との蜜月


ブルックナー:交響曲第4番 第1楽章
ベルナルト・ハイティンク指揮 ロンドン交響楽団
2019年3月10日、バービカン・ホールでのライヴ収録

ハイティンクとロンドン交響楽団の初共演は1996年のこと。その後、彼がロイヤル・オペラの音楽監督を退任した2002年前後から関係が深まりました。ベートーヴェンの全曲ツィクルスやブラームスの全曲ツィクルス、マーラーやブルックナー、R.シュトラウス、ショスタコーヴィチなどのレパートリーで毎年のように共演。 2013年と2015年には来日公演を行い、絶賛を博しました。その名演の多くは、LSO LiveレーベルよりCD化されています。

カテゴリ : Classical

掲載: 2019年06月13日 18:30

更新: 2021年10月22日 13:30