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インタビュー(1) ベスト・アルバム『19972016』について

掲載: 2017年03月03日 12:00

――ベストアルバム『19972016』、じっくり聴かせていただきました。BOOM BOOM SATELLITESの軌跡をリアルに体感できるのはもちろん、まるでオリジナルアルバムのような新鮮さを感じられる作品だと思います。

「あ、そうですか。良かったです」

――制作はいつ頃からスタートしたんですか?

「去年の9月の後半くらいかな。曲数が多いので、1日1曲ずつ進めても60日くらいかかるじゃないですか。制作中はずっと決まった時間に起きて、作業をはじめて。4カ月くらい、クリスマスもお正月もなくやってました」

――順番に聞いていきたいのですが、まず選曲の基準はどういうものだったんでしょう?

「何となくとしか言いようがないんですけど。まずはザックリと選曲して、そこから<入る、入らない>という判断を早めにして。すべてシングルのA面みたいなベスト盤ではなく、バンドの音楽性とストーリーを感じ取れるような作品にしたいという気持ちはありました。いま<オリジナルアルバムのように聴けた>と言ってくれましたけど、<初めまして>のリスナーが聴いても、音楽作品として楽しめるような盤であってほしいなと。そのなかで自然に選ばれた曲ということです。あまりにも代表曲が入っていないのも良くないので、そこも考えながら作っていました」

――マスタリングも中野さんが手掛けていますが、どうしてご自分でやろうと思ったんですか?

「マスタリング・エンジニアの仕事というのは一般の音楽ファンにはそれほど理解されてないと思うんですが、違うスタジオで録音されたり、違うプロデューサーを立てて作られた複数の楽曲に統一感を持たせて、アルバムを聴きやすくするのが主な役割なんです。つまり<明るいサウンドの爽やかなアルバム>とか<ヘヴィで重低音の効いたアルバム>というテイストを付けていくということです。僕自身、いろいろなマスタリング・エンジニアと仕事をしてきたし、素晴らしいエンジニアも知っているのですが、約20年分のバンドの歴史を汲み取って作品に落とし込んでもらおうとすれば、きっと無理が出るだろうと思ったんです。マスタリング作業はある程度の客観性が必要なので、本来はアーティストがやるべきことではないんですが、1回しかない機会だし、腹を括ってやってみようと」

――なるほど。BOOM BOOM SATELLITESのキャリアを象徴する楽曲の数々がひとつの新しい作品として再構築されていることに大きな感銘を受けましたが、中野さんのなかにアルバム全体のサウンドの方向性というものはあったんでしょうか?

「無意識のうちに手を動かしていたことが多かったし、<どうしてこういう音になったか?>を具体的に言うことはできないですけど、その背景にあるのは、デビューしたから20年近く、あるいは川島くんと知り合ってからの30年弱の歴史です。そのなかで起きた様々な出来事が自分のなかにストーリーとして存在していて、それに突き動かされていたところが大きいので」

――BOOM BOOM SATELLITESの各時代の楽曲に改めて向き合ってみて、改めて気付くことも多かったのでは?

「発見はたくさんありました。その時期によって自分たちが置かれている環境や使っている機材もぜんぜん違うし、20代だから成立していたこともあると思うんです。年齢を重ねれば音楽を作る手法は成熟してくるので、完成度は高まるんです。でも、その一方で<壊れかけていても、力技やバイタリティで音楽として成立させてしまう>というパンク的な姿勢、つまり<楽器はそんなに上手くないけど、とんでもなくカッコいい>みたいなことは起きづらくなる。初期の作品からは、そういうことを強く感じました。もうひとつ感じたのは、クリエイターとしての一貫性です。状況はどんどん変化しましたが、ひとつひとつの音に対する魂の込め方だったり、曲を大切にしようとする姿勢はどの時代のマスター音源からも感じることができたので」

――しかも、初期の楽曲を聴いても懐かしさを感じなかったんですよね。すべての楽曲がいまの音として成立しているというか。

「確かに懐かしさはないと思います。リマスタリングによっていまの音楽として聴けるという面もあると思うけど、マスター音源を聴いた時点でタイムレスな印象があったので。当時から<そうでありたい>と思ってたんです」

――時代に左右されない楽曲を生み出していきたい、と。

「そうです。ダンスミュージックは基本的にトレンドで出来ているものなので、キックの音色がちょっと変わるだけで<古い音楽だな>ということが起こりえるんです。たとえば、R&Bからハイハットが消えた時期があるんです。ちょうどミッシー・エリオットが登場したあたりなんですが、R&B、ヒップホップのアーティストがすごくフリーキーなリズムの組み方をするようになって。そうなると、ハイハットが入っているだけで<このビートは古い>ということになる」

――なるほど。

「僕達がデビューした頃は、ブレイクビーツが全盛の時代だったんです。『JOYRIDE』(1997年)もブレイクビーツを取り入れた楽曲なんですが、当時から<もっと普遍的な価値のある曲にしたい>思っていたんですよ。“The Rockafeller Skank”のファットボーイ・スリム、“Setting Sun”のケミカル・ブラザーズなど、ナショナルアンセムを持っているアーティストの名前は残っていますが、その頃シーンに登場したアーティストの多くは時代とともに消えていったわけです。だからこそ<そうならないような楽曲を残したい>という気持ちはすごく強かった。ビートミュージック、クラブミュージックはトレンドに左右されるジャンルだけど、10年、20年、100年聴けるような曲にしたいっていう。僕自身、やっぱり名盤が好きですから。ブレイクビーツの元ネタは1960年代、1970年代の音楽だったりするわけで、それはいつまで経っても色褪せないじゃないですか。自分たちの音楽もそうなってほしいと願っていました」

――今回のベストアルバムの制作は「自分たちがやってきたことは間違いじゃなかった」と改めて確かめられる機会でもあった?

「そうですね。収録されていない曲もいっぱいあるんですが、DATテープをデッキで再生したときのワクワク感はすごいものがあったんです。初期の曲は小さいスタジオでレコーディングしていたから、独特の密室性があるんですけど、それがすごく良くて。<コアなファンを自分の部屋に連れてきて聴かせてあげたい>と思うくらい、当時の生々しい空気感が伝わってきたし、このベスト盤もその気持ちの延長戦上にあるんだと思います」

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